スーパーカブ60周年に見たモノ作りの凄み カブ以外にも愛される仲間が17社集まった

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東京タワーも今年で60周年。

テレビ局が次々に開局されていった1958年。

その電波塔を一つにまとめるのが東京タワーの本来の仕事。赤く塗られたタワーは当時333mの自立式タワーとしては世界一の高さを誇り、鉄骨を使用したトラス構造と手間ひまのかかるリベット留めは職人魂がなした技とも言える。

結果、この東京タワーの完成で日本の建築技術を世界に発信し、一方では東京の観光名所となり戦後の焼け野原「東京」から1つの大きな転機になったといえる。その美しさは現在も国内外から入場者が途絶えることなく今年1月には1億8000万人を達成、多くの人に愛され続けている。

自動車でいえば、「スバル360」もそうだ。

スバル360の模型(編集部撮影)

SUBARUが今から60年前に発売した軽自動車は、その可愛いスタイルから「てんとう虫」のニックネームで多くの国民の夢を運んでくれた。スバル360は小さなボディに大人4人が搭乗できる大衆車として爆発的大ヒット。

戦時中に飛行機を作っていた技術者が携わった開発では、徹底的な軽量化と航空機技術のモノコック構造の車体に可愛らしく美しく空力に優れたデザイン、信頼の2ストローク2気筒エンジンをリアに搭載。最小限のサイズのクルマから最大限の夢を提供していたのだろう。

さらには販売価格が他車に比べ低価格だったこともあり、結果的に日本国内に「マイカーブーム」を巻き起こし、現在のモータリゼーションの礎を築いたともいえる。

私たちはどれだけ未来への懸け橋を作れているか?

今回の「スーパーカブと、すばらしき仲間たち」に出展されている企業は17社。60年の齢を重ねてもなおも輝き、人々のニーズから外れていない商品や製品ばかりだ。

今回の特別展示は8月24日までウェルカムプラザ青山(入場無料)で開催(写真:編集部撮影)

一部をご紹介させていただいたが、何故に1958年だったのか。

元号でいえば昭和33年であることから、終戦の昭和20年より干支でいう「一回り」したところだ。

当時、厳しい時代を生き抜き復興にすべてを捧げてきた人たちにとって、やっと一回りした再スタートだったのではないか。

それは、平和で豊かな未来に向けたモノ作り。次世代にわたる懸け橋を自ら想像し形にしたのかもしれない。だからこそ、今でも色あせることのないモノとして人々に愛され続けていると考えずにはいられない。

現代に生きる私たちが、どれだけ未来に向けた懸け橋を作れているのか?

改めて、昭和のモノ作りを考えるチャンスとなったスーパーカブの60周年だった。

宮城 光 モータージャーナリスト

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みやぎ ひかる / Hikaru Miyagi

1962年生まれ。1982年鈴鹿サンデーオートバイレースに於いてデビュー3位。直後にモリワキレーシングと契約、1983年鈴鹿4耐で優勝、同年全日本F3クラスとGP250クラスに於いてチャンピオン獲得。1984年全日本F3クラス、F1クラスチャンピオン獲得。1988年HondaのHRCと国内最高峰GP500ccライダーとして契約。1993年より活動の場をアメリカに移し、全米選手権でチャンピオンになるなど、日本だけでなく海外でも活躍。1998年からは国内4輪レースでもその才能を発揮し、翌年の「4輪スーパー耐久シリーズ」ではチャンピオンを獲得する。また、世界耐久選手権シリーズ・鈴鹿8時間耐久ロードレースでは2003年より5年間ホンダドリームレーシングの監督を務めた経験ももつ。2016年には米国ボンネヴィルにおいて4輪車の世界最高速度記録を達成、世界記録保持者。開発車両ではTeam無限のマン島TT参戦車両・2輪電動マシン「神電」の初期からの開発ライダーを担当し2018年時点で5連勝中、2019年もチャレンジする。一方では、警視庁及び企業向け交通安全講話やライディング&ドライビング講師、専門学校講師などのほかに、 日本テレビのMotoGP解説者や雑誌などのメディアでレースやバイクの解説を務めるなど、多方面で活躍中。ホンダ・コレクションホールではホンダ歴代の2輪4輪グランプリマシンの維持管理テストレーサーを務める。無類のラジコン好き。

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