アメリカで「電動スケーター」大ブームの理由 ベンチャー投資が過熱、「ユニコーン」も誕生

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市当局による供給数の制限もあり、電動スケーターシェアの市場では需要に供給が追いついていない。使いたい時に使いたい場所で見つからないという不満の声も漏れる。「マイ電動スケーター」を購入する人もいるほどだ。

電動スケーターはアメリカの大都市で深刻な交通渋滞の緩和に一役買えるか(写真:Skip Scooters)

この夏、電動スケーターでワシントンDCの観光を楽しんだというジャスティン・ワンさん(23)は、週末にもかかわらず、スケーターが見つかったラッキーなユーザーの一人だ。西海岸出身のワンさんは、川を隔ててワシントンDCに隣接するバージニア州の街に最近引っ越してきた。

これまでバードの電動スケーター(最速で時速約24キロメートル)とスキップ(同29キロメートル)を試したが、スキップのスケーターは坂道でも楽に上れたという。「電動スケーターがあれば、どんな目的地にでも行ける。渋滞とも無縁で、駐車場を見つける必要もない」とワンさん。道路幅が広く、広々とした街並みのワシントンDCでは電動スケーターシェアが普及しやすいといえる。

供給不足、安全問題など課題も山積

供給不足について、スキップのダストアCEOは、車を使うほうが手っ取り早いという「誘惑」にかられないよう十分な台数が供給されるべきだとしつつも、不十分なインフラの下で電動スケーターが街中にあふれる状態も好ましくないと言う。「要はバランスの問題だ」(ダストアCEO)。

電動スケーターの速度が遅いという声も聞かれるが、安全重視のバードは、運転免許証の保有と18歳以上という条件をユーザーに課している。無茶な走行でけが人が出たり、歩道を走ったりするケースも報じられる中、安全性の向上は急務だ。

ライム・バイクは電動スケーターの開発で、セグウェイ社との提携を始めている(写真:Lime Bike)

ハードの品質で差別化を図る戦略にも余念がない。スピンは電動スケーターの自社開発・生産も検討しているほか、スキップは軽量化やサスペンションの充実など、カスタマイズに力を入れている。

グローバル化への意欲も旺盛だ。今年6月にはライムが、8月にはバードが相次ぎ欧州に進出。各社とも世界展開を狙う。電動スケーターシェアが日本に上陸する日も遠くなさそうだ。

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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