なぜ日本人はトルコリラで大損をするのか 年利17%以上なのに儲からないのはなぜ?

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さて2つめの視点です。実は、損している人からは、こんな声もよく聞きます。「トルコリラが大きく値下がりしているので、そろそろ反転してトルコリラ高になると考え、投資を行ってみたが、さらにトルコリラ安が進み、大損をしてしまった」。では、「そろそろトルコリラ高に推移する」とは、どういう基準で決めていたのでしょうか?

「大数の法則」で判断してはいけない

ここで、コイントスの例を挙げてみます。5回コイントスをして、すべて5回とも「表」が出たとします。このとき、6回目にコイントスを行ったら何が出ると考えますか?

行動ファイナンス理論の中では、「表が出過ぎているので次は裏が出るだろう」とのバイアスが生じるケースとして、「大数の法則」(law of large numbers)と「小数の法則」(law of small numbers)が取り上げられることが多いのです。

冷静に考えれば、6回目にコインを投げて表が出る確率は2分の1です。つまり、過去の結果と独立しています。しかし、何回か続けて投げた場合に、結果として起こるパターンとして、表と裏が同じくらいの回数出るはずであるという「大数の法則」に基づいて判断するというバイアスがあります。

簡単に言えば、コイントスを100回行えば表が出る確率、裏が出る確率はそれぞれ50%に収れんしていくだろうとの考え方です。これをトルコリラ投資の判断に当てはめた場合には2015年の騰落率(対円)がマイナス19.76%、2016年の騰落率(対円)がマイナス18.64%、2017年の騰落率(対円)がマイナス11.34%となっていたので2018年はそろそろ反発するだろうと予測し、安易にトルコリラ投資を行ってしまう例がこれに該当します。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン(米プリンストン大学名誉教授)は、人々が大数の法則として専門的には知られている平均の法則を誤解することによって起こる錯誤を揶揄して、「小数の法則」として表現しています。まさに小数の法則で意思決定をしてしまったことが、トルコリラ投資で失敗した一つの要因ではないかと考えています。

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