想定外の暴雨は「賢いダム活用」で対処できる 異常気象に向け強靭で安全な国土構築を急げ

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それは豪雨だけではありません、大渇水も同じことなのです。

つまり、気象の狂暴化が進行していく将来、過去の実績データを基にして計画し整備したインフラでは、発生する水害に対しては対応できなくなってしまうのです。

気象の狂暴化に備えて既存ダムの活用を

戦後、水関連のインフラは過去のデータを使って計画し、70年間かけて整備してきました。しかし、近年の気象の狂暴化に伴い、その水災害のインフラ計画を見直さなければならなくなっているのです。もちろん、計画の見直しをするだけではなく、実際にそれに即して新しい計画を実践していかなければなりません。

しかし、計画を見直すことはできても、それを実践していくことは容易ではないのが実情です。なにしろ、この70年間で日本の都市は大きく発展し、人口と資産が集中しました。この膨張した都市を守るため、都市内部で河川の幅を広げ、洪水対処能力を増強させていく工事は困難を極めます。

東京都中央区虎ノ門~新橋間のたった1.4kmの「マッカーサー道路」でさえ、計画決定から68年もかかってやっと概成(ほぼできあがること)したのを見ればわかるでしょう。

ほかに都市を洪水から守る方法としては、都市郊外で遊水池を作るか、上流の山の中でダムを造って洪水を留める手法があります。しかし、住宅開発が著しい都市郊外で、遊水池を造る候補地を見つけ出すのは困難です。山の中で新しいダムを造るのは、費用と社会的状況からして、これもまた極めて困難です。

しかし、それでも方法はあります。それは、『水力発電が日本を救う ふくしまチャレンジ編』でも詳しく解説した「ダムの運用変更」と「ダムの嵩上(かさあ)げ」です。

方法1:ダム運用の工夫

この半世紀で、台風や豪雨の予測技術は急速に進歩しました。気象衛星や気象データ、スーパーコンピュータの活用で、洪水が襲ってくる以前にその情報は得られます。大規模な降水が予測されれば、ダムの貯水を事前に下げておけばよいのです。ダムの建設を新たにしなくても、水を貯め込む容量を運用で増加させるわけです。

具体的なダム運用の一例を述べましょう。

大雨の初期段階で水を貯める量を少なくして、ダム下流に放流していきます。雨量が次第に大きくなってくる段階で、ダムの貯水量に応じて水を貯め込んでいきます。降水がピークを過ぎて、ダム流入量と放流量が一致した後は流入量と同じ量を放流していくのです。

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