「500ページの夢の束」は勇気を与える映画だ 自閉症の女の子が「あきらめない強さ」教える
脚本を手掛けたマイケル・ゴラムコ自身、熱狂的な『スター・トレック』ファン。そんな彼が本作を執筆するにあたり、ニューヨーク・タイムズに掲載された記事からインスパイアされたと語る。そこには、自閉症の女の子が、『ロード・オブ・ザ・リング』に合わせたフィクションを書くことが趣味だったといった内容が書かれていたそうで、「彼女は社会とつながりを持ちたいと思っていた。それを読んでウェンディというキャラクターの核の部分が育ちはじめたんだ」と語る。
監督は、幼少期にポリオを患い、自身も障害とともに生きてきたベン・リューイン。彼は脚本を読んで「自閉症の人たちを描いた脚本はたくさん送られてくる。その中でこれは、ダイナミックな主人公とともに、最も活気を感じさせる脚本だった。自閉症は、二次的な問題だった。私たちは主人公が好きで、彼女に成功してほしいから、彼女を追いかける。この旅は、自分の居場所を探す彼女に達成感と啓発をもたらす。それはまさに人生の旅だ」と感じたという。
主人公のウェンディを演じるのはダコタ・ファニング。ショーン・ペンの娘役を演じた2001年の『I am Sam アイ・アム・サム』で、天才子役の名をほしいままにした彼女も今や24歳。名門ニューヨーク大学に進学し、大学生活と女優の仕事を両立させるなど、誘惑の多いハリウッドの中でも自分を見失うことなく、順調にキャリアを積み重ねてきた。
近年は貧困や紛争、災害などから子どもたちを守る「セーブ・ザ・チルドレン」のアンバサダーに就任したり、大統領選への出馬を表明したヒラリー・クリントンに献金を行ったりと、社会問題にも関心を寄せている。尊敬する女優としてジョディ・フォスター、ナタリー・ポートマンといった文武両道を実現した女優たちの名前を挙げていることからも、彼女が目指す女性像がうかがい知れる。
主演は「アイ・アム・サム」の娘役、ダコタ・ファニング
そんな彼女にとっても、本作の主人公ウェンディを演じることはチャレンジとなった。「脚本を読んで、この物語は特別だと思った」と語るダコタは、「ほかの人に演じてほしくなかった。ウェンディに命を吹き込めるのはわたしだけだと思ったから。怖さもあったけど、今までと違ったチャレンジになると思った」と本作に懸ける思いを語る。
自閉症の女性が数百マイルの旅をひとりで行うことは容易なことではない。バスのチケットを買うのもやっとというウェンディだが、それでも彼女はトラブルを一つひとつ解決しながら、ハリウッドを目指していく。そんな一途な思いに突き進むウェンディを、ダコタが繊細に演じている。
ウェンディの姉オードリーを演じるのは、2013年の映画『スター・トレック イントゥ・ダークネス』でキャロル・マーカス博士を演じていたアリス・イヴ。また、施設を飛び出したウェンディを捜索するフランク巡査を演じるのは、熱狂的な『スター・トレック』ファンとして知られるパットン・オズワルトという目配せも面白い。そしてウェンディを探していたフランク巡査が『スター・トレック』を通じて、ウェンディとコミュニケーションを図ろうとチャレンジするシーンは、本作でも屈指の名シーンとなっている。
これらのキャスティングは、『スター・トレック』ファンであるウェンディに向けた、制作側からの「君はひとりじゃないよ」というメッセージのようにも感じられる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら