「500ページの夢の束」は勇気を与える映画だ 自閉症の女の子が「あきらめない強さ」教える
アメリカ疾病対策センター(CDC)の調査によると、アメリカではおよそ68人に1人の子どもたちが自閉症スペクトラムと診断されているという。それはアメリカのみならず、先進国でも自閉症の子どもたちが増加傾向であるといい、日本も例外ではない。
そして、9月7日に日本で公開予定の映画『500ページの夢の束』に登場する21歳のウェンディも自閉症を抱えるひとり。彼女はソーシャルワーカーの協力を得て、シナモンロール屋でアルバイトを始めるなど、社会とつながりを持とうとしている。そんなウェンディだが、人気SFシリーズ『スター・トレック』の知識では誰にも負けない。同じショッピングモールに働く『スター・トレック』ファンが彼女にクイズ合戦を挑んでくるが、驚異的な知識量で圧倒する。『スター・トレック』は彼女が社会と向き合う接点でもあるのだ。
そんな『スター・トレック』の誕生50周年を記念して、脚本コンテストが開催されることを知ったウェンディは、夢中になって500ページの大作を書き上げる。しかし、とあるすれ違いから、姉のオードリーと口げんかをしてしまったウェンディ。
「スター・トレックの脚本」を届けるために一人旅立つ
ショックを受けた彼女はそのまま寝込んでしまい、翌朝、気づいた時には郵送での締め切り時間を過ぎてしまったことを知る。彼女は涙をこぼして悔やむが、やがて自分で直接、ロサンゼルスのパラマウント・ピクチャーズ(『スター・トレック』の映画会社)まで直接届けようと決心する。自立支援ホームを抜け出し、愛犬と一緒にハリウッドまでの数百マイルの旅に向かう――というのが本作の物語だ。
『スター・トレック』の何がそれほどまでにウェンディを引き付けるのか。同作に登場する人気キャラクターのスポックは地球人とバルカン星人とのハーフで、感情をうまく表現できない人物として描かれる。
そこにウェンディは自分自身を重ね合わせているのだ。それゆえに500ページにわたってウェンディが語り尽くした『スター・トレック』の物語は、彼女の伝えたい思い、切実さが詰め込まれている。そんなウェンディが書いた物語と、現実が二重構造でシンクロしていくさまも本作の見どころとなっている。
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