有事の円買い、今年は不発が続いているワケ 投資家にとっての常とう手段だったが…
日銀が金融緩和策の「持続可能性を高める」ため、政策修正を検討しているとの報道が相次ぐ中でも円の上昇は週明け23日、短期的なものにとどまった。
「日銀は依然として緩和策を継続しており、国内投資家が円を借りて海外資産を買うのを後押ししている」。9830億ポンド(約144兆円)の資産を運用する英リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントのアントン・エーザー最高投資責任者(CIO)はそう話す。
米連邦準備理事会(FRB)が2016年以降、利上げを7回実施し、欧州中央銀行(ECB)も債券買い入れ策の年内終了を計画している中で、日銀はペースこそ鈍化しているものの国債買い入れを継続。
その結果、日本の投資家は、世界市場の動揺にもかかわらず、海外資産に資金を投入し続ける可能性が高い。
日本の投資家による6月の外国株式投資はネットで1.5兆円の買い越しとなり、この3年近くで最高となった。貿易摩擦が激しさを増した7月の第1週でも、3710億円相当の外国株を購入している。
ヘッジ敬遠
一方、日本の投資家は、自らが抱える巨額な米国資産の為替リスクをヘッジすることに対して、消極姿勢を強めている。
「一部の投資家は、外国債券投資に対する為替ヘッジを減らしているように思う」と、大手邦銀のシニアトレーダーはロイターに語った。
フルヘッジで米10年債を買っている日本のファンドマネジャーは現在、昨年上期と比べても半分程度の30ベーシスポイント程度の利回りしか稼げない。また、FRBの利上げ継続が見込まれる中で、ヘッジ後の利回りは今後さらなる低下が予想される。
日本の投資家によるヘッジの削減は、円需要が減ることを意味する。
「為替ヘッジコストは急上昇している。日本の投資家はヘッジをやめ、それが円の買い控えにつながっている。円売りの流れだ」と、RBCキャピタル・マーケッツ(ロンドン)の首席為替ストラテジスト、アダム・コール氏は指摘する。