岸田氏、優柔不断の果てに出した「撤退宣言」

首相の「禅譲」に望み託すが、先は視界不良

自民党総裁選への立候補を断念した岸田政調会長の賭けは成功するのか(写真:共同通信)

2021年までの日本のリーダーを決める9月の自民党総裁選が、安倍晋三首相の圧勝での「3選」となることが確定的となった。去就が注目されていた岸田文雄政調会長が総裁選不出馬と首相支持を決断したからだ。これにより、総裁選は首相と石破茂元幹事長による事実上の“一騎打ち”の構図となる見通し。すでに国会議員票で党内の3分の2以上を固めた首相が、地方票でも石破氏を引き離しての「トリプルスコアの圧勝」(細田派幹部)となることが確実視されている。

岸田氏がこのタイミングで不出馬を決めた背景には、「総裁選に出馬しても勝機は全くない」(岸田派幹部)ことに加え、地元・広島が西日本豪雨での最大の被災地となって、「総裁選どころではない政治的環境」(同)になったことがあるとされる。岸田氏周辺は「勝てない戦は避け、次の“ポスト安倍”での禅譲に望みを託す」(側近)と語る。が、首相サイドからは「今さら支持するといわれても、遅すぎる」(細田派幹部)との厳しい声が出るなど、「優柔不断の果ての撤退宣言」(麻生派幹部)には、首相候補としての岸田氏の資質を問う声も出ている。

7月23日の「秘密会談」で首相支持を決断

岸田氏は7月24日夕、都内で岸田派幹部とともに記者会見。「今の政治課題に、安倍総理(総裁)を中心にしっかりと取り組みを進めることが適切だと判断した」と不出馬の理由を語った。岸田氏は前日23日の首相との会談を踏まえて3選支持を決め、自らが領袖を務める岸田派(宏池会・48人)についても首相支持で一本化する考えを固めたと説明した。同派内では、若手を中心に「勝負しないと、次への展望も開けない」との主戦論が高まっていただけに、記者会見に同席した幹部も沈んだ表情を隠せなかった。

岸田氏はこれまで政局の節目ごとに、首相との「二人だけの会談」を重ねてきたが、23日は各メディアの「首相動静」にも載らない秘密会談だった。会見で記者団から問われ、会談を認めた岸田氏は「会談の具体的やり取りは明らかにしない」と口を閉ざしたが、党内には「内容も明らかにできない秘密会談では、談合の批判も招く」(竹下派幹部)との厳しい声も広がる。しかも、この秘密会談については菅義偉官房長官が25日午後の記者会見で「(首相は岸田氏と23日に)会ったことはない、とのことだった」と否定するというおまけもついた。

岸田氏は会見で首相との秘密会談について、「私が目指す政治についても話をした。首相は私の考え方にていねいに耳を傾け、理解を示していただいた」と、首相と意思疎通の深さを強調してみせた。そのうえで不出馬については、「厳密にいえば、今日(24日)の朝、判断した」とし、会見の前に首相に電話して、「不出馬と(首相の)支持について会見すると申し上げた」と淡々と説明した。

ただ、岸田氏の決断は派内にもほとんど伝えられず、「寝耳に水」(ベテラン)「出るとばかり思っていた」(若手)など、困惑の声が相次いだ。岸田氏は会見で、西日本豪雨への対応や北朝鮮問題など外交課題での安倍政権の継続を不出馬の理由に挙げたものの、永田町では「豪雨災害の際の『赤坂自民亭』騒動に巻き込まれた失敗が出馬断念につながったのでは」(自民長老)とのうがった見方も広がる。

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