岸田氏、優柔不断の果てに出した「撤退宣言」 首相の「禅譲」に望み託すが、先は視界不良
会見で、「主戦論」と「禅譲期待論」が交錯していた岸田派の今後の対応について問われた岸田氏は、「一致結束してもらえると私は信じている」とやや自信なげに答えた。岸田氏の後見人でもある古賀誠元幹事長は、「岸田派はいかなる場合も会長を中心に結束していく」と強調するが、主戦論の若手は、「勝負もしないで禅譲なんてありえない」と不満タラタラで造反の気配もにじませる。
その一方で、秘密会談での首相との「密約説」についても、岸田氏は「人事のやり取りは全くなかった」と否定した。もっとも岸田派内では、「何らかの約束がなければおかしい」(ベテラン)と岸田氏の幹事長への昇格や派幹部の重用などへの期待がある一方で、「総裁選後の党・内閣人事で岸田派が重用される保証はない」(若手)との不安も拭えない。
そうした中、岸田氏の撤退宣言で、総裁選は「首相圧勝の構図」が一段と鮮明になった。出馬準備を進める石破氏は、「ここに至った岸田さんの苦悩は、察するにあまりある。同じ時代を生き、同じ自民党の栄枯盛衰を見てきたという意味で、話してみたい」と、微妙な表現ながら秋波を送った。推薦人確保に不安がある野田聖子総務相は「これまで通り地道に努力する」と語ったが、ここにきて仮想通貨ビジネスに絡む”疑惑”が取りざたされており、「結局、推薦人が集まらないのでは」(自民幹部)との見方も広がる。
「首相が石破氏にトリプルの差をつける」
岸田氏の決断で、自民党内各派閥のうち、細田(94人)、麻生(59人)、岸田、二階(44人)の主要4派が首相支持となった。態度未決定の竹下派(55人)も、多くの首相支持議員を抱える。さらに党内第2勢力とされる無派閥議員(73人)の半数近くは、首相を支える菅官房長官が率いる「菅グループ」だ。
こうした状況から「首相支持の自民議員はすでに全体(現状では405人)の3分の2を超えて最終的には8割以上となる」(自民幹部)のが確実視されている。さらに議員票と同数の票が配分される党員・党友票でも、各種世論調査結果から「首相が石破氏に大差をつけている」(自民党事務局)とされる。
首相は6年前の前回総裁選では、党員・党友票で石破氏にダブルスコアに近い大差をつけられた。この点について首相は周辺に、「今回は党員・党友票でも石破氏を圧倒する」と決意を示したとされる。首相サイドが目標とするのは、「石破氏にトリプルスコア(3倍)の差をつける」(側近)という地滑り的圧勝だ。
このため、年明け以降には「石破氏と支持層が重なる野田氏を出馬させて、石破氏の得票を減らす」(細田派幹部)との戦略も検討されていたが、ここにきて「小細工をしなくても、石破氏にトリプル以上の差をつけられる」(同)との強気の読みから、「首相と石破氏の一騎打ちの方が分かりやすい」(自民幹部)との声も強まっている。
岸田氏不出馬で首相圧勝の構図が明確になったことに伴い、党内では早くも、総裁選後の党役員・内閣改造人事に関心が移りつつある。首相サイドは表向き、「人事は総裁選の結果を踏まえて考えること」(側近)と予防線を張るが、党幹部の間では「政権の3本柱は動かせない」(同)との見方が広がる。麻生太郎副総理兼財務相、二階俊博幹事長、菅官房長官という政権の骨格を続投させることで、首相が現在の1強体制を堅持するという読みだ。
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