セブンの「生ビール」がそもそも困難な理由 事前の反響を受け試験販売もいっさいできず

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(3)小規模事業者への配慮

そうはいっても未成年者へも飲酒運転が疑われる人へも、売らなければいい。飲酒運転は買った人の自己責任ともいえる。

ということで、3つ目の理由は小規模事業者に配慮した可能性が捨てきれないことだ。

セブンの生ビール販売のニュースを聞いた際に、「これで小規模な酒屋は絶滅だろうな」と感じた人もいただろう。もし、セブンが全店でSサイズ100円、Mサイズ190円の生ビールを販売したら、小規模事業者は絶望的な影響を受ける可能性はある。

大規模事業者のビール安売りは厳しく監視されている

公正取引委員会は、大規模事業者がビールを廉価販売して客寄せに使うことを、かなり厳しく監視している。結果的にそれは、商店街のなかにあるような小さな酒屋、小規模小売店を保護する結果をもたらした。

酒税法の改正を受けて、2017年6月からスーパーマーケット等ではビールが値上げされた。仕掛けたのは国税庁で、目的は酒類の廉価販売を規制するため。小売店は、仕入れ価格+販売管理費の合計コストよりも廉価な価格でビールを販売できなくなった。

国税庁はもともと廉価販売について指導のみを行ってきた。しかし法改正後は廉価販売について、小売店の酒類販売免許も取り消せるようになった。

たとえば、イオンはホームページにわざわざ「ビール取引に関するQ&A」を作り、廉価販売を行っていない旨を宣言したほどだ。

法改正後、アサヒビールが業務用のビールを安売りしたことで改善指示を受けたと一部で報じられた。ビール離れが続くなか、私は安価販売についてはむしろ良い施策のように感じるが、行政は逆に安価販売を禁じようとしている。もちろん、それはわからなくはない。優越的な立場の買い手から、売り手を守るためだ。しかし、結果的に小規模な酒類販売小売店を助ける方向に動いている。

ここまでの流れをざっと整理する限り、セブンが店頭での生ビール販売に乗り出せる可能性は現時点で限りなく小さくなったように見える。小さな酒屋は助かっただろう。もちろん、セブンの生ビール販売中止を、政治的な、小規模な酒類販売小売店を助けるための行政指導と考えるのは、「うがちすぎ」かもしれない。

あくまで、私の酔ったうえでの、勘ぐりだ。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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