自殺の可能性がある人にどう向き合うべきか 話を聞き、フォローすることが重要だ
胸が張り裂けそうな彼のメモはネット上で広まった。彼は両親や家族に責任を感じさせたくはなかったが、競争の激しい公立高校でのプレッシャーにこれ以上耐えられなかった。
「子どもたちは、達成しなければならない目標と、それに届かない感覚につねにさらされているようだ」と、ニューヨーク州グレン・オークスにあるジャッカー・ヒルサイド病院小児・思春期精神科の副所長ロバート・ディッカー医師は言う。「オールAの成績を取らないとよい大学には行けないし、よい人生も送れないと思わされている」
「目立つ」ことも大事になっている
子どもたちに求められているのは、成績だけではない。SNSが日常ツールとなっている今、「目立つ」ことも大事なことになっている。こうした中、自尊心が低い生徒は、強い不安を感じ、薬物に頼ったりすることもある。そして……不安を感じすぎて、命を絶ってしまう子どももいる。
米ワシントン州シアトルに暮らしていた普通の高校生、オードリー・アンナ・ヒッケイもその1人だ。彼女は当初、行方不明と報告されていたが、後に変わり果てた姿で発見された。家族ぐるみで付き合っていた友人はこう話す。「彼女はほかの人のいいところは見えていたのに、自分のいいところは見えていなかった」
どうすればオードリーを助けられたのだろうか?
多くの若者は、実際にその危険な1歩を踏み出す前に自殺について考えていた。ワシントン州で2年ごとに行われる「健全な若者調査」によれば、8年生(日本の中学2年生に相当)の15%、10年生(同高校1年生に相当)の19%、12年生(同高校3年生に相当)の18%が、過去12カ月以内に自殺を真剣に考えたことがあった。この調査では全米の生徒の自殺念慮と自殺未遂を追跡している。
シアトルに住む高校生、カイラー・ウッドは自殺を考えていた友人2人を助けたことがある。友人の1人である男子生徒は、カイラーにメールで自分の考えや感情を送ってきた。それに対してカイラーが返信をしたが、当初彼の反応は薄かった。ただ「悲しい世界だ」とだけ返信してきていたという。が、すぐに普段のような返信に変わった。それによってカイラーは、男子生徒に気持ちが届いたのだとわかったという。
カイラーの母親、ミシェルはこう振り返る。「私は、彼女が友人たちを助けたいと思っていることは本当にうれしかったけれど、もっと深刻だと思ったので学校に伝えるように言いました。悲しいことになるよりは安全を取ったほうがいいでしょう」。実際、ミシェルは学校に電話して状況を説明。カイラー自身も地域の「ベインブリッジ青少年センター」に報告した。同センターは50年続く団体で、12歳から19歳の思春期の子どもに対して専門家による無料のカウンセリングと介入を行っている。
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