EVだけでなく「燃料電池車」の覇権も狙う中国 「バス・トラック」で日本を猛追する

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上海市や武漢市以外にも、北京市や広東省仏山市などいくつかの都市で、燃料電池バスやトラックを導入する計画が進んでいると、新聞報道は伝えている。地方政府がFCV普及に熱心に取り組む背景には、中国政府のEV後を見据えた戦略がある。

FCVでも覇権を目指す中国

冒頭に書いたように、中国は世界一のEV大国だ。メーカー別EV生産台数世界1位は比亜迪(BYD)、車載用リチウムイオン電池の世界1位は寧徳時代新能源科技(CATL)が占めている。今まさに、中国はEV市場の覇権を握りつつある。

その中国は、FCVでも世界一を目指している。「製造強国」を目指す国家戦略「メイド・イン・チャイナ2025」(2015年5月発表)に、FCVの産業化と水素インフラの整備を進めることが明記された。また、「エネルギー技術革命のイノベーション行動計画(2016~2030年)」(2016年6月公布)では、15の重点技術の1つに「水素エネルギーと燃料電池技術」が挙げられている。

FCVはEVと比べ、技術的な参入障壁は格段に高い。特に、燃料電池システム技術や、それを組み込んで完成車を作り上げる技術では、まだ日本との差は大きい。特徴

しかし、EVで世界の覇権を握るまでに至った中国の圧倒的に大きな国内市場と、国の強いリーダーシップという2つの特長は、FCVでも威力を発揮する。たとえば、水素ステーションの整備などは、国のリーダーシップで一気に進む可能性が高い。FCV普及には、多額の補助金やナンバープレートの優先交付〈注〉といったEV急拡大に効果のあった手法が使われるだろう。

FCVは日本だけのガラパゴス技術になるかもしれない、などと悠長に言っている場合ではない。気がついたら中国の後塵を拝していたということのないように、国も企業も「水素戦略」をしっかり進めていかなければならない。

〈注〉北京、上海などの大都市では、大気汚染対策で新車のナンバープレート交付を制限しており、新車購入希望者にとって100倍以上の狭き門となっている。NEV(新エネルギー車:EV、FCV、PHVなど)には優先的に交付される。
西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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