スバルのさえない中期計画が映す不安な未来 米国戦略は強気、先進技術の本気度には疑問

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とはいえ、米国ではトランプ政権が自動車関税を現状の2.5%から25%に引き上げる検討を進めている。現地での生産能力を高めれば影響は抑えられるが、需要の変動リスクを考えると、当面は生産能力を維持していく考えだという。

今回の中期経営計画は、米国に関しては強気な姿勢が見られたものの、全体としては量的な成長より、信頼回復や販売店によるブランド力の訴求など、質的な改善を強調している。2020年度までの3カ年の売上高・営業利益や試験研究費等の計画は、2016年に発表した前回の中計における2018年度までの3カ年見通しと比較してほぼ変わらない。

先進技術の開発計画に新味なし

懸念もある。今後5年先をメドに市場に投入される、自動運転や電動化などの先進技術についての発表内容に新味がなかったことだ。

車とスマホやインフラをつなぐことで新たな機能を提供するコネクティビティについては、2022年までに日本・北米で販売する8割以上の新車で導入することを明らかにした。また今回スバルは初めて、「アイサイト」に代表される自らの高度運転支援技術を「自動運転」という言葉で表現した。

スバルは2018年内にも米国で「XV(現地名:クロストレック)」のプラグインハイブリッド車(PHV)を発売する(撮影:尾形文繁)

しかしその開発スケジュールは、「2024年に高速道路・一般幹線道路でのレベル2以上(加減速や車線変更などをシステムが行う)を実現する」というもので、日産自動車の「2020年に一般道路(交差点含む)でのレベル2を実現する」、ホンダの「2025年に高速道路でのレベル4(ドライバーが関与しない完全自動運転)を実現する」といった計画に比べると、控えめな目標といえる。

電動化については、電気自動車(EV)を2021年に発売することを以前から公言しているが、今回の中計発表では明確な言及がなかった。電動車について、中村社長が「各国のガソリン車規制対応には不可欠だが、現在は過渡期であり、話題先行の状況だ」と話し、開発における優先度の低さが垣間見えた。

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