ドラレコ品切れ続出!「爆売れ」止まらぬ理由 カー用品店で派手に展開、保険会社も熱視線

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ここに目をつけたのが、保険会社だ。東京海上日動火災保険は、2017年から自動車保険の契約者を対象に、月額650円でドラレコ特約を開始した。損保ジャパン日本興亜も今年1月から同様のサービスを始めている。

東京海上日動の特約の場合、加入者にはパイオニアと共同開発した高解像度のドラレコを貸与する。事故などで強い衝撃を受けると、事故受付センターに事故映像が転送される。これが、保険会社の代行する事故交渉で力を発揮する。「事故時は誰しも気が動転するので、証言が食い違う場合も多い。映像を基に原因を究明し、過失割合を先行提示することで、有利に交渉を進めることができる」(会社側)。契約件数は右肩上がりに伸び、累計14万件を超えたという。

ハンズフリーでオペレーターともつながり、もし利用者から反応がない、ケガが確認されたなどの場合は、保険会社が消防へ通報してくれる。会社側は、「離れて暮らす高齢の親御さんや、免許を取ったばかりのお子さんを持つ方に訴求したい」と意気込む。

ドラレコは自動運転市場に入り込めるか

今後も市場拡大は続くか。焦点の1つが、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転車などへの搭載だ。政府が今年3月末に開催した未来投資会議では、自動運転車の責任関係に関する議論において、車両の安全性の確保のため、2020年度までにデータ記録装置の設置義務化とデータ記録機能の実用化を検討することが定められた。

ドラレコ各社はこの市場を取り込みたい構えだが、未来投資会議を取りまとめる首相官邸の担当者は、現状のドラレコの性能を疑問視する。「データ記録装置として、ドラレコが対象にならないわけではない。しかし、今の性能ではどうしても標識や信号の色の記録に取りこぼしがある。現実的には、事故時の車の挙動などを記録するイベントレコーダーの活用が中心になるだろう」。自動運転車市場を取り込むためには、さらなる精度向上が喫緊の課題だ。

一時的なブームから、必需品としての普及が進むドラレコ。乗用車への搭載率はいまだ10%以下で、開拓の余地は十分にある。市場拡大はしばらく続きそうだ。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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