性暴力「後遺症」に悩む30代女性を救った告白 「家族との対話」が次の一歩につながった
20代後半の頃にも、抜け落ちていた子どもの頃の記憶が急によみがえったことがある。コールセンターでのアルバイト中、トラブルがクレームを引き起こし、ストレスが重なったときに「電話の声」が聞こえてきた。
一人で留守番をしていると、電話がかかってきた。出ると、医師と名乗る男性が、「子どもたちの体の成長を検査するために電話している」と言う。
「胸を触ってみて。その次は下のほう」
何もわからず、言われるままにした。最後に「気持ちよくなってきた?」と言って電話を切った、男の声。その口調も、生々しく思い出した。
「母が帰ってきて、今こういうことがあったって言いました。そうしたら母がすーっと青ざめて。それでやばいことを言ってしまったって気づいた」
母は学校に電話をした後、彩さんを怒鳴りつけた。
「『あんたは人がいいからいけないのよ』って。私は母のその言葉のほうがショックで。子どもが理解するのは難しい言葉だと思います。いい人だといけないなら、どうしたらいいの? 誰も信じちゃいけないのかなって」
その後、彩さんが出た「医師と名乗る男性からの電話」の注意喚起のお知らせが学校で配られた。彼女は「これが自分だとばれないようにしなきゃ」と思い、それ以降は友人たちと遊べなくなった。
彼女が「記憶を封じ込めていた」理由
なぜ抜け落ちている記憶が多いのか。彩さんは「抑圧されていた」と言う。
「電話のことを、母は忘れてほしいと思ったんでしょうね。私もその記憶は抑圧されて、ただ急に友達と遊びたくなくなったことだけを覚えていた」
3歳か4歳の頃の「おじさん」から受けた性暴力については、実は小学生の頃までは覚えていた記憶がある。
「小学校低学年の頃に、仲の良かった子に話したことがあるんです。そうしたらその子が『それ、やばくない?』って。人に言っちゃいけないことなんだって思って、それから記憶がなくなった」
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