性暴力「後遺症」に悩む30代女性を救った告白

「家族との対話」が次の一歩につながった

性暴力によるトラウマに悩み続けた(写真:Masao/iStock)
性暴力の被害者を、被害から生き抜いた人という意味を込めて「サバイバー」と呼ぶことがある。被害を受けた過去はあっても、それだけがサバイバーの人生ではない。今、彼女ら彼らはどんなふうに生きているのか。それぞれの今を追う。

ライブは表現が許される場所

東京の下町で行われたライブパフォーマンス。ある自作の曲を歌った後で、彼女は客席に向かって、少し笑いながらこう語りかけた。

「私が小さい頃に経験した強制わいせつの被害。そのトラウマのために、大人になってからたくさんおカネを払った。保険が適用されない診療でした。そんな思いを込めた曲です」

谷口彩さん(仮名)。30代前半の彼女は今、清掃のアルバイトをしながら、歌手としてライブ活動を続けている。

音楽を楽しいと思い始めたのは小学校5年生の頃。家にあったギターで遊んだ。楽譜の読み方を教えてもらった以外は独学だ。兄弟の中でギターにいちばん興味を持ったのは自分だった。

歌も好きだった。覚えているのは、音楽の授業の発表会。順番に前で歌ったが、緊張でほとんど声が出なかった。悔しくて家で練習し、次の発表会のときには堂々と歌うことができた。そのときの気持ちが今も胸に焼き付いている。

高校時代は軽音楽部に入り、作詞作曲もするようになる。洋楽が好きで、最初に書いた曲も英語の歌詞。ある黒人の女性アーティストをバイブルのように繰り返し聴いた。

「黒人の文化、差別されてきた背景。そういうものを背負いながら世の中にメッセージを発信しているアーティストにあこがれる。好きな曲の歌詞の中で『周りの人はキャリアや立場を頭で考えなさいっていうけれど、私は心で考えて生きていく』、みたいなことを歌う彼女のことが好き」

次ページ「友人の自殺未遂」をきっかけに心理学を学ぶ
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • 最新の週刊東洋経済
  • コロナ後を生き抜く
  • 読んでナットク経済学「キホンのき」
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
香港問題めぐり米中激突<br>加速するデカップリング

6月30日、「香港国家安全法」が施行されました。「一国二制度」の下での高度な自治が失われたとして、西側世界と中国の対立は一気に深まっています。米中経済の分離は、サプライチェーンの見直しなど、グローバル企業にも大きな変化を迫りそうです。