dTVはなぜ映画「パンク侍」に乗り出したのか

エイベックスの音楽ビジネス戦略がヒント

コンテンツの出し口を考えるウインドー戦略は、数年前、Netflixが配信ファーストでオリジナルの連続ドラマを展開したことをきっかけに、世界的に多様化されていった経緯があります。それから、出口のスキームにとらわれないIP(知的財産権)を育てることが優先されている動きが高まっています。でもそれは音楽業界畑のエイベックスグループにとっては当たり前のことでもあるようです。

「エイベックスはモノ作りの会社から始まっています。音楽も映像コンテンツもIPを持って商売することが念頭にあります。ですからdTVのIPをしっかり育てていくという意味でも、今回の『パンク侍、斬られて候』が劇場ファーストで展開することに迷いはありませんでした」(笹岡氏)

定額制の映像配信は「ファンビジネス」

さて、戦略が見えたところで、肝心のコンテンツの中身についても触れると、原作の世界観を踏まえながら、本格時代劇とアクション、ギャグ、ラブストーリーの要素がすべて盛られています。「アナーキーな映画だな」というのが筆者の正直な感想です。公開直後早々から口コミは賛否両論に分かれています。それも狙ったうえでのことだったのでしょうか。

エイベックス通信放送コンテンツプロデュースグループオリジナルコンテンツユニットシニアプロデューサーの伊藤和宏氏(右)とゼネラルマネージャーの笹岡敦氏(筆者撮影)

「平均化したコンテンツは面白いと評価されますが、平均3点のコンテンツは毒にも薬にもなりません。1点のものは毒にもなるかもしれませんが、記憶に残ります。5点は熱烈なファンを作ることができます。エンターテインメントビジネスは人の人生を強烈に変えるようなものを提供することも一つの使命にあると思っています。そのためには誰も見たことがないエンターテインメントをつねに模索し続け、作り続けることが役割にあると思っています」(伊藤氏)

会員ビジネスの映像配信サービスは、ファンビジネスでもありますから、『パンク侍、斬られて候』が「面白い」と思わせたファンを1人でも会員として獲得または継続できたのなら、それは成功と言ってもいいのかもしれません。こんな振り切った考え方で作られていることも、このコンテンツの魅力の一つなのかもしれません。エンタメ好きでまだご覧になっていない方はそれを確かめる価値はありますよ。

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