お互いの両親を挟んでの話し合いの機会が幾度となく繰り返された。しかし、両親を交えての話し合いは、皮肉にも逆に泥沼と化して、火に油を注ぐこととなる。
「妻の言い分としては、『子育てのはけ口として遊んでいただけで、浮気なんかしてない』という主張の一点張りでした。実の娘がそう言うので、親心としては信じたかったんでしょうね。
義理の両親はむしろ俺の親に対して、『お宅の息子さんは、うちの娘を大切にしてない』と責めるんです。そうすると、うちの親もいい気はしない。結果的に、親同士も険悪な雰囲気になって、離婚ムードが加速していったんです」
モラハラ夫の烙印
この段階で、ようやく大地さんの中で、離婚という二文字が現実味を帯びてきた。親同士も激しくののしり合っているし、離婚はもはや避けようがない。
しかし、せめて、1歳と3歳の子どもたちは絶対に自分が引き取って育てたい――。そう思うようになった。
親権には、「監護継続性」、つまり、現在子どもと同居している親の現状を尊重するという原則がある。
里美さんはそれを察知してか、離婚調停が始まる矢先に、何の予兆もなく、実家に子ども2人を連れ去った。明らかにシングルマザーの支援団体の入れ知恵によるものだと、大地さんは直感した。
大地さんが親権を取るには、何とかして妻の不貞やこれまでの子どもへのかかわり方を証明する必要がある。その頃から、何か証拠になるものはないだろうかと大地さんは、身の回りを気にし始めた。お互いの予定を書き込んだカレンダーは、妻が毎日遊び歩いていた証拠になるはずだった。
さらに、床に無造作に置かれた里美さんの携帯電話――。そこには、不倫相手とのメールのやり取りがつぶさに残っているはずだった。しかし、里美さんは、大地さんより何枚も上手だった。
「これは、調停で争いになるなと思ったときには、カレンダーが突然家から消えていたんです。彼女の携帯電話も、中身は全部データが消去されていた。僕が気づいたときには、彼女の不倫の証拠になりそうなものは、すべてなくなっていた。男とのプリクラは、日付がなかったので、証拠としてはまったく扱ってもらえなかったんです。
メールのやり取りも、深夜に何度も『子どもが泣いてるから帰ってこい』というメールが僕の携帯には入ってるのに、それは僕の携帯だから、証拠にはならなかったんです。やられた感は、半端なかったですよ」
それどころか、子どもたちを実家に連れ去られた後に、何度も里美さんに電話をかけたことを逆手に取られ、大地さんはモラハラ夫の烙印を押されてしまった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら