「洋菓子のヒロタ」、株主の反乱で社長が解任 雑貨イルムスも展開する21LADYで一体何が

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サイアムの持ち株数は、今年3月末で119万株。1億数千万円で取得した株式が4億数千万円に値上がりしているわけだから、投資は大成功ともいえる。ただ、サイアムは、21LADYの現状には満足しておらず、さらなる儲けを狙っているようだ。

営業黒字化でも、厳しい実態

黒字化を果たしたとはいえ、それは「洋菓子のヒロタ」の不採算店舗大量閉鎖によるものであり、将来に明るい展望が持てるわけではない。

21LADYは、2000年に旧ベンチャーリンクの出身だった藤井氏が小売り、サービス、外食など「ライフスタイル産業の総合支援」を目的に設立。英国風パブ「HUB」で有名なハブなど、多くの企業への投資を手掛けた。

現在は2002年に子会社化した「洋菓子のヒロタ」と、2010年に子会社化した北欧からの輸入雑貨販売の「イルムスジャパン」の2社に絞り込んでいる。

買収時に民事再生手続き中だったヒロタは、数年後に再建を果たしたが、再び長期低迷。ここ数年で不採算店舗の大量閉鎖に取り組んできた。かつて50店以上あった常設店舗は今年3月末に18店まで減り、黒字が定着しつつある。

それでも、主力のシュークリームの売り上げは停滞し、量販店などへの卸売りに力を入れるがカバーできていない。夏場を中心に販売するシューアイスも天候に左右され、天候不順に見舞われた昨年夏は苦戦。

これが響いて21LADYの前2018年3月期は、当初5000万円(前期比56%増)を見込んだ営業利益がわずか800万円にとどまり、黒字化を狙った純利益は店舗閉鎖の特別損失もあって赤字が続いた。

輸入雑貨イルムスも赤字が続いている(編集部撮影)

一方、イルムスも子会社化以来の赤字体質が続いている。こちらもここ数年で不採算店舗の閉鎖を行い、10店以上あった店舗は今年3月末で7店となったが、販売は低迷しており、赤字体質脱却のメドは立っていない。

21LADYは長く赤字が続いたため、2014年3月期末には2000万円超の債務超過に転落。翌期以降も最終赤字は続いたが、工場売却、藤井社長や投資ファンドへの相次ぐ第三者割当増資で何とか債務超過を回避してきた経緯がある。

前期には、当初黒字化を狙った純利益が赤字見通しとなり、債務超過を避けるため今年3月に急きょ第三者割当増資を実施。サイアムや藤井社長のほか、グループの幹部までもが増資を引き受けている。

21LADYは、今2019年3月期に売上高26億円(前期比1.7%増)、営業利益5000万円(同6.2倍増)と増収増益を見込み、純利益も3000万円と9年ぶりの黒字を目指す。

だが、過去の経緯もあって、株主の多くはこの業績予想に疑心暗鬼となっているのかもしれない。昨年来の株価上昇にもかかわらず、それまで長い間、我慢を強いられてきただけに、蓄積していた不満が爆発し、創業者である藤井氏にノーを突き付けたのだろうか。

なお、藤井氏が社外取締役を務める、日本郵政では賛成96%、NECネッツエスアイも同じく96%の賛成でそれぞれ再任が可決されている。

柿沼 茂喜 東洋経済 記者

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かきぬま しげき / Shigeki Kakinuma

入社以来、一貫して記者として食品・外食、金融・証券、電力・ガス・石油、流通、精密機器、総合電機、造船・重機などの業界を担当。この間、『週刊東洋経済』『会社四季報』『金融ビジネス』の各副編集長、『株式ウイークリー』編集長、編集局次長などを経て現職。

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