ランドセル巨大化と「学力低下」の意外な関係 ただ「教科書を厚くした」ことを問うべきだ

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・学級規模が小さくなるほど学習の達成度が上がる。つまり、40人学級より30人学級、30人学級より20人学級の方が学力が上がる

・児童生徒の情緒面の安定についても、小規模学級の方が効果が大きい。つまり、40人学級より30人学級、30人学級より20人学級の方が情緒の安定度が高くなる(出所:最新教育データブック、時事通信社)

日本においても上智大学の加藤幸次教授らによる「学習集団の規模とその教育効果についての研究」があります。それによると、「小学校にあっては、すべての教科において、20人学級は30人学級より、30人学級は40人学級より学習の効果が高い(素点)ことがわかった。」ということです。

この他にも、同様の研究はたくさんあります。文部科学省のサイトには次のような例が出ています。

・米国テネシー州の実験(就学前~第3学年)では、小規模学級(13~17人)は通常学級(22~26人)より優れた成績をあげた

・米国連邦教育局の公表「学級規模縮小:何が分かっているか?」では、低学年で学級規模縮小は有効。特に15人~20人規模で顕著

・日本でも、広島大学、九州大学、名古屋大学などの研究において、少人数学級の方が有利との報告が出ている

さまざまな問題の解決につながる

このようなわけで、少人数学級を実現すれば、教科書を厚くして教える内容を増やしたり、授業時間数を増やしたりしなくても、学力が上がる可能性は高いのです。

そうすれば、ランドセルが軽くなるだけではありません。人数が減ることによって個別指導する余力も生まれるので、勉強がわからないまま座っている時間が少なくなります。勉強が好きになり学力も上がる可能性が高まります。1人ひとりに目が行き届くようになれば、情緒が安定し、いじめが減るかもしれませんし、たとえあったとしても、その発見率が高まります。ということで、欧米各国がすでに実現している少人数学級を、日本でもぜひ実現してほしいと切望します。

親野 智可等 教育評論家

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おやの ちから / Chikara Oyano

長年の教師経験をもとにメールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。読者数は4万5000人を超え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』など、ベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。全国各地の小・中学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会でも大人気。ブログ「親力講座」もぞくぞく更新中。講演のお問い合わせとメルマガ登録は公式サイトから。Xで毎日発信中。

 

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