W杯の「サッカー・スパイク戦争」が熱すぎる 長友のオーバーラップを可能にする「あの靴」

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ナイキのスパイクは、スウッシュをどんなふうに入れても、必ずデザインとしてカッコよく成立させているのがすごいところだと思います。トータルで、人を魅き付ける力があるんですよね。

プレースタイル別にスパイクを用意

「履かせ込む力」のもうひとつは、独創的な先端テクノロジーや設計思想に裏打ちされた、商品を届けるストーリーの上手さにあると思います。商品の企画開発力です。

ナイキのサッカー・スパイクは、選手のプレースタイルによって大きく4つに分かれています。それぞれ、【マジスタ】【マーキュリアル】【ハイパーヴェノム】【ティエンポ】というカテゴリーです。ここに、ナイキのイノベーティブさが体現されていると思います。

これはナイキが7~8年くらい前に業界で先駆けて始めたことで、今では他メーカーも追随しています。この4つには、それぞれグローバル共通の「わかりやすいキャッチフレーズ」がついていて、選手は誰でも、この4つのプレースタイルから、自分に合ったスパイクを選べる。どんなスタイルにも対応できる。自分の得意なプレー、自分をいちばん表現できるプレースタイルを、より活かすことができるのです。

360度のボールコントロール【マジスタ】
【マジスタ】360度のボールコントロールを可能にするスパイク(マジスタオブラ2エリートFG、写真:Futaba SOCCER WORLD)

【マジスタ】は、360度ボールコントロールしやすいスパイク。有名なところでは、Jリーグ・ヴィッセル神戸移籍で話題のスペインのイニエスタ選手が着用しています。どんな角度でどんなタイミングでボールがこようと、足に吸い付くようにコントロールできる。

アウトソール(シューズの接地面にあたる部分)のポイントが円を描くように配置されていて、これにより360度の動きを可能にする作りになっています。イニエスタ選手によく見られる、クルッと回転するような動きは、このスパイクのおかげも大きいと思います。

スピードキング【マーキュリアル】

【マーキュリアル】は、爆発的なスピードを生むスパイクです。今のところ、今回のW杯でいちばん得点を獲っているスパイクは、実はこの【マーキュリアル】なのです。

【マーキュリアル】爆発的なスピードを生むスパイク(マーキュリアルヴェイパー12エリートAG-PRO、写真:Futaba SOCCER WORLD)

着用している代表的な選手は、ブラジルのネイマール選手やポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド選手。とにかく、足の速い選手を活かすスパイクです。縦に速く走りやすく、瞬時の駆け引きで相手を抜き去る動きを実現します。

普通、靴底のソールプレートは前から後ろまで同じ素材でつながっているのですが、【マーキュリアル】がユニークなのは、靴底が前後で、ソールプレートが分かれているところです。前と後ろの間の中足部に異素材を入れることで前足部から屈曲しやすくなっていて、前(前足部)から走り出しやすい作りになっています。このセパレートでアウトソールを作るというのは、業界初の革新的な試みです。

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