「超短期離職」の転職は売り手市場でも厳しい 入社1カ月半以内に辞める新卒が増えている

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ごく短い期間で会社を辞める人が増えている大きな要因として考えられるのは、やはり空前の売り手市場という「情報」だ。マスメディアからは採用市場が、新卒、転職を問わず売り手傾向で、「就職しやすい」という情報が日々発信されている。その結果として、次のようなイメージが醸成されてしまっている。

「今なら転職しやすそう」「仕事が嫌だったら他の仕事に変えたらいい」「もっと自分に合った仕事を探すために転職しようかな」……。

入社したばかりの新卒社員というのは、学生から社会人への急激な環境変化から、さまざまなストレスを抱える。慣れない仕事、慣れない人、慣れない生活習慣――。このようなストレスの多い状況を変えるために、「転職」を選択することは自然だろう。これに、売り手市場という「情報」が加わり、本人の転職希望を周囲(親や知人)も後押しする。

つまり転職に対する心理的なハードルが全体的に下がっているのだ。

もし、採用市場が会社側に有利な「買い手市場」だと言われていたら、「仕事もきついけど、転職活動はもっと大変かも」といった抑止力が働く。しかし、現状の「売り手市場」では、その抑止力が全く働かないと言っていい。

辞めた会社以上の好条件では入れない

とはいえ、4月26日の配信記事「就活生は『売り手市場』を勘違いしていないか」でも触れているが、超売り手市場なのは中小企業が中心で、大手企業はむしろ求人倍率が低く、買い手市場になっている。転職市場でも同様で、大多数が志望する大手や人気企業への転職は、相変わらず狭き門ということだ。

新卒の際に不採用になった大手企業に再チャレンジするため、短期離職をする人も少なくないが、大手企業の競争率は変わらないうえ、短期離職による悪い印象が加わってしまい、また不採用となってしまう。結局、辞めた会社以上の好条件の会社には入れず、元々いた会社か、それ以下の条件の会社に転職する、ということも実際にある。

数カ月で会社を辞める超短期離職者だけでなく、1~2年程度で会社を辞めた人も含めた短期離職者の転職サポートを日々行っていると、売り手市場でも短期離職からの転職は、苦戦する。短期間で離職していると、企業から「社会人適性が低い」「継続力がない」といった先入観を持たれてしまうからだ。

その先入観を払拭できる人はいいのだが、大半の短期離職者は、面接をしてもその先入観通りの印象を与える結果となってしまう。

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