アルピーヌ「A110」、華麗すぎる復活劇の全貌 仏のスポーツカー、日本に50台限定で見参

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アルピーヌは当初から欧州のラリーや公道レースで活躍。なかでも1962年に誕生したA110の活躍は顕著で、1973年に始まった世界ラリー選手権(WRC)で初代チャンピオンを獲得した。一方、1960年代から参戦していたル・マン24時間レースでも、1978年に総合優勝を獲得している。

一連のストーリーはフォルクスワーゲン「ビートル」をベースに生まれたポルシェ、フィアット「600」の高性能版として名を成したアバルトと似ている。この3つのブランドはRR(リアエンジン・リアドライブ)であったこと、モータースポーツに積極的だったことも共通している。その中でアルピーヌはフランスを代表するスポーツカーとしてファンを増やしていった。

アルピーヌは、当初から一貫してルノーのエンジンやサスペンションを使い続けるなど、ルノーと関係が深かったこともあり、WRCタイトルを獲得した1973年にルノーの傘下に入っている。アルピーヌはその後もスポーツカーの生産を続行したものの、1995年にいったん活動を休止した。

当時のルノーはスポーツモデルをルノースポールに一本化しようとしたのかもしれない。しかしゴーン氏はスポーツカーにはプロモーション効果があると考える経営者であり、GT-R以上の輝かしい系譜を持つアルピーヌ復活に言及したのではないかと想像している。

ただしプロジェクトは順風満帆には進まなかった。当初アルピーヌは英国の小型軽量スポーツカー、ケータハムとの共同開発生産を計画し、2012年に合弁会社を設立したのだが、この関係は2年後に解消している。

それでもアルピーヌは復活をあきらめず、ケータハム出資分の株式を買い取ると2016年に試作車「ビジョン」を発表。翌年、市販型がデビューし、今年、日本での発売に至ったのである。並行して今年のル・マン24時間レースでトヨタが悲願の総合優勝を獲得した世界耐久選手権に2013年から参戦している。

伝統の継承

フランス大使公邸で発表された新型A110は、庭園に旧型とともに展示された。まず感じたのはスタイリングが似ていることだ。

A110プルミエール・エディション(筆者撮影)

実は新旧A110の骨格は、太い鋼管を車体中央に背骨のように通したバックボーンタイプからアルミ製プラットフォームに変わり、リアタイヤの後方へ縦に積まれていたエンジンはリアタイヤ前方に横置きされるミッドシップ方式となるなど、構造は変わっている。なのに見た目はそっくりだ。

フランスから来日したエクステリアデザイン担当のデアン・デンコフ氏はこの点について、4つの独立した丸いヘッドランプ、ボンネット中央を走る「スパイン(脊柱)」、ボディサイドのくぼみ、傾斜し湾曲したリアウインドーなどのディテールを継承したことがポイントだと語っていた。

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