なぜ日本株は急落したのか 背景にアベノミクス期待はく落も
[東京 25日 ロイター] - 25日の東京株式市場で日経平均<.N225>は398円安と大きく崩れた。海外ファンド勢の一時的なポジション調整との見方が大勢で、いまのところ市場の動揺は限定的だが、外部要因に特段の変化はみられず、背景にはアベノミクス期待のはく落があるとの見方も出ている。
場合によっては政府、日銀に対する政策催促相場につながる可能性も否定できない。
<スイス系証券の大口先物売買>
下げ足を速めたのは後場寄り直後だった。数百枚単位の先物売りが断続的に出て午後1時過ぎに日経平均は300円を超す下げ幅となった。最大の要因は円高だ。ドル/円の一時97円割れに連動する形で先物売りが膨らみ、裁定解消売りを伴って下げ幅が拡大した。中国リスクを警戒する声も出ていた。金融引き締め観測から短期金利が上昇し、今年6月のような中国の金融システム混乱を招くのではとの懸念が強まったという。
もっとも、外為市場では株安が円高要因とされ、中国の短期金利上昇についても「下げのきっかけになったに過ぎない」(SMBC日興証券株式調査部部長の西広市氏)との見方が多い。実際、この日の上海総合指数<.SSEC>は前日比1.5%安と大きな下げにはならず、中国リスクを日本株急落の理由にするのは説得力に欠ける。
市場関係者が口を揃えるのは海外ファンド勢の売りだ。ソシエテ・ジェネラル証券ディレクターの小原章弘氏は、「CTA(商品投資顧問業者)による為替や日本国債を絡めた先物売りに加え、マクロ系ヘッジファンドポジション調整売りが観測された。これまで積み上げたポジションをいったん軽くしたようだ」と指摘する。
伏線は21日の先物手口に表れていた。あるスイス系の証券会社が日経平均先物とTOPIX先物で合わせて6800枚を超える突出した買いをみせたのだ。市場では同証券の買い手口を巡って様々な思惑が広がっていたが、25日引け後に東証、大証から開示された資料で、同スイス系証券が大量の先物売りを出し、この日の売り越しの筆頭だったことが明らかになった。
「(スイス系証券の)ポジションが偏っていたことを察知した別のヘッジファンドが午後売り崩しを仕掛け、投げ売りを誘ったのだろう。裁定買い残が積み上がっていたことも仕掛けやすかった理由だ」(準大手証券トレーダー)。
<政策催促相場に進展も>
種明かしが終われば、来週からは上昇相場に復帰と考えたくなるが、状況はそれほど簡単ではない。市場からは「アベノミクスへの期待が後退し、11月の決算を控えたヘッジファンド勢がポジションを減らしている可能性もある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア投資ストラテジストの折見世記氏)との声が出ている。
政府が24日に公表した10月の月例経済報告では、景気について「緩やかに回復しつつある」として、基調判断を前月から据え置いたが、個別項目では輸出を「横ばい」とし2カ月連続で下方修正したほか、消費は「持ち直しの傾向」で据え置き、景気回復に一服感も感じさせる内容となった。
アベノミクスの成否を占う上でカギを握るのは、賃金上昇の早期実現だが、その道筋はまだ明確ではない。消費増税をうまく乗り越えられるのかどうかも海外投資家の注目点だ。アベノミクスの進ちょくが遅れるようであれば、政策催促相場に進みかねない。
三菱UFJモルガンの折見氏は「政策当局に危機感があれば本当の危機は来ない。株価の一段安があれば買いの好機になる」という。市場では日銀によるETF(株価指数連動型投信)やJ―REIT(不動産投信)などリスク性資産の購入枠拡大に期待が集まっている。会期中の臨時国会と来年の通常国会での成長戦略実現も焦点になる。株安に歯止めをかけられるかどうか。これからが政策当局の腕の見せどころになる。
(河口浩一 編集:伊賀 大記)
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