お客様の要望は多種多様、携帯の機種は増やすべき−−小野寺正・KDDI社長兼会長

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お客様の要望は多種多様、携帯の機種は増やすべき−−小野寺正・KDDI社長兼会長

-- 上期の携帯販売台数は約3割減。年間1割減の目標を変えていないのはなぜか。

業界全体で減少しているが、昨年秋以降に導入された(販売奨励金モデルを見直す)新販売方式が主な理由と見ている。年間目標を変えていないのは、メーカーさんとの関係を考えてこれくらいは売りたいという希望的観測もあるから。実際には収益との兼ね合いを見ながらになるが、下期はいろいろな施策を考えている。冬商戦の新製品を見ていただければ、われわれの考えもわかっていただけると期待している。

-- 販売台数の減少でメーカーは疲弊している。通信キャリアとしてどう対応する。

難しい問題だが、グーグルの携帯OS「アンドロイド」を搭載した端末はオープン化モデルの一つ。これとキャリア主導で進めてきた垂直統合型モデルの端末は、かなりの期間併存すると見ている。垂直統合型はお客様の信頼を得ており、これを継続していくためにも従来どおり端末を出していく必要がある。メーカーさんとの協力関係は大きく変わるものではない。

-- 景気悪化の影響は出ていないのか。法人向け固定通信などは厳しいのでは。

過去を振り返ると、販売台数や純増数に直接的な影響はあまり見られなかった。ただ今回は携帯の普及率が上がったところでの悪化だけに、ある程度の影響は出てくる可能性がある。法人向けで言えば、通信は企業のいわば神経網。景気が悪くなると通信トラフィックが下がる例も過去にはあったが、今は逆に海外への渡航費を減らして通信費を増やす場合もある。データセンター事業においては企業のアウトソーシング需要が増えている。法人系ビジネスはまだまだ伸びる。

-- 携帯の買い替えサイクルが長期化し、ライバル社のトップは開発サイクル見直しを示唆しているが。

年に2~3回、新しい端末を出していかないとお客様の興味を引くことはできない。ただ、すべて新規開発の必要があるかどうかは別の話だ。お客様の要望は多種多様になっており、細かく対応するには、機種数は増えないといけないと考えている。コストを下げながらどうやるかは、われわれとメーカーさんの腕の見せどころだ。

-- 来期以降の見通しは? 固定通信の赤字脱却は可能か。

携帯はまだまだ市場拡大できる。法人や組み込み型モジュールが有望だ。現在赤字の固定通信はFTTH(家庭向け光通信サービス)の赤字削減と、その他サービスの貢献で部門黒字化を目指す。2011年3月期は、営業利益6000億円(08年3月期4004億円)を達成したい。

(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

おのでら・ただし
1948年生まれ。東北大学工学部卒業後、NTT入社。第二電電(後のKDDI)に移り、89年取締役、2001年に社長就任、05年より会長を兼任。

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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