貧困の子を救う「子ども食堂」が抱える課題 安心・安全な場所にするために必要なこと
堀:保険に加入すると、加入した団体と接触する機会も増え、各現場の状況の聞き取りなどにもつながってきそうですね。
湯浅:そうですね。地域と連携が取れているところのノウハウを、そうではないところが学ぶとか、そういう機会ももっと増やしていきたいですね。
堀:こども食堂を運営されている方々からの反応はいかがですか?
湯浅:今回は「全国200のこども食堂の3年分の保険料を」ということで集めているのですが、その200のこども食堂の人たちは、とても協力的で、日々たくさん情報や写真を寄せてくれるので、クラウドファンディングのページに活動情報を毎日更新できています。これを通じて世の中の人たちに理解してもらいたいという気持ちの表れです。44都道府県からの200団体が参加しているので、全国隅々の団体の人たちがこの問題に関心を寄せて参加して一緒に盛り上げようとしてくれています。こども食堂は新しい動きなので、まだネットワークもちゃんとできていません。でも、こういうことを通じてお互いつながりが生まれていくというのも、1つの作用かなと思っていますね。
子どもの貧困問題における「体験」の重要性とは
堀:子どもの貧困率(相対的貧困率)が、2012年時点で「6人に1人」だったのが、2015年時点ではほんの少しだけ回復。とは言っても、まだ「7人に1人」が貧困状態にあります。改めて、ずっと貧困の問題に取り組んでこられた湯浅さんは、今の状況をどのように認識し、どういう点に課題を感じていらっしゃいますか?
湯浅:子どもの貧困は、相変わらず厳しいです。昔から言っているのですが、貧困はおカネだけの問題ではありません。やはり「体験」が人生の価値観になり人生の選択肢を増やしているという意味で、「体験」も大事。こども食堂は、いろんな大人とかかわることで「体験」を得られるというところに、重要な機能、価値があるのではないかと感じます。
たとえば、冬場にみんなで鍋をやっていた時の話ですが、「鍋をつつくって本当にあるんだ」と言った高校生の女の子がいました。彼女は高校生になるまで家族で鍋をつつくという体験をしたことがなかったんですよね。「テレビでは見たことがあるけど、実際には体験したことがない。あれはフィクションだと思っていたから、みんなが目の前でつつき始めたのを見て『これ、本当にあるんだ』って言っちゃった」と。その時の体験から彼女が何を持ち帰ったか、ということを言っているのですが、「みんなは鍋を食べるのが普通らしい。もしかしたらうちは違うところがある家庭なのかもしれない」と気づくかもしれない。もしかしたら、「自分が家庭を作る時には、みんなで鍋をつつくような家庭を作りたい」と思うかもしれない。「鍋を食べるって何の意味があるんだ」と感じるかもしれませんが、そういう「体験」を通じて人生の選択肢が増え、価値観が変わっていくというのがとても大きいことだと思います。
貧困の問題は相変わらず厳しいのですが、おカネだけでなく「体験」も重要。その両方をやっていこうという時に、「体験」の提供は民間のほうがある意味得意。その中でのこども食堂の役割というのは、とても大きいのではないかと思います。