「紀州のドン・ファン」過剰な報道への違和感 謎解き重視、刑事ドラマ化するワイドショー
多くの刑事ドラマでは、序盤から中盤にかけて、さまざまな情報を交錯させたり、いかにも伏線のように見せかけたり、それを一変させる強烈な証言をつかませたり、ミステリーの色を深める脚本・演出が施されています。今回の事件では、ワイドショーの各番組も、かなり似たようなことをしているのです。
たとえば、「野崎さんには注射器を使った形跡がなく、大量の覚せい剤は口から摂取した可能性が高い」「警察は野崎さんの会社から中瓶のビール瓶約2400本を押収した」「野崎さんは毎日中瓶2~3本のビールを早い時間から飲みはじめる」などの覚せい剤や接種方法に関わる情報。
「生前、野崎さんは『イブちゃんはなぜあんなに苦しんで死んだのか。イブちゃんは私の胸をかきむしって死んでいった』と訴えていた」「イブちゃんの埋葬方法で野崎さんと妻がもめていた」「警察が土葬されたイブを掘り起こして成分を調査している」などの愛犬に関わる情報。
「通夜のときスマホをいじってばかりいて親族に怒鳴られた」「出会いは、昨年秋に羽田空港で転んだ野崎さんを妻が助けたことから。ただ、転んだのは野崎さんの計算だった」「プロポーズは『君の人生をピンク色に染め上げたい。僕の最後の女性になってくれませんか?』」「妻は野崎さんが亡くなる前に離婚話を切り出されていた」などの妻にまつわる情報を報じて、ミステリーの色を深めました。
さらに、妻が雑誌『FRIDAY』のインタビューに答えると、ワイドショーの各番組が一斉報道。「警察の聴取はもう7回も受けていて、私を疑っているのは間違いない」「ウソ発見器にかけられて覚せい剤に関する質問をしつこく聞かれた」「毛髪検査のために髪の毛を100本くらい切られた」「『結婚してくれたら毎月100万円渡す』と言われ、『美味しい話』と思って結婚した」「月100万円をお得だと思っていたのだから、私がやるわけない」などの詳細をたっぷりと報じました。
刑事ドラマなら、まだ中盤にすぎない
ここまで読んで「もうお腹いっぱい」という心境になったのではないでしょうか。この3週間、朝から夕方まで各局のワイドショーが、これらの情報を報じ続けているのです。
しかし、ここまでの報道を1時間の刑事ドラマにたとえると、まだスタートから30~40分の中盤にすぎません。犯人逮捕、犯行方法や理由の解明は、まだ先であり、私たちはそれ以前の段階を長々と見せ続けられているのです。
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