まさか非核化費用のツケを日韓に回すとは! 「段階的廃棄」もあっさり認めてしまった…

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記者会見では人権問題についての質問が相次いだ(写真:ロイター)

安倍晋三首相は、会談前に米国に赴き、直前にはわざわざ電話で拉致問題の提起を頼んだが、「アメリカ・ファースト(米国優先)」というトランプ大統領の哲学には変わりなかった。 

一方でトランプ大統領は会見で、北朝鮮の非核化に必要な費用の負担について問われると、「韓国と日本が支援してくれるだろう」と、臆面もなく答えている。

また、北朝鮮への制裁解除のタイミングについてもトランプ大統領は、記者会見で問題発言をしている。

当面は経済制裁を続ける考えを示したものの、「北朝鮮の非核化が後戻りできない時点になるのはいつか」との質問に対して、「20%ほど進めば、後戻りできなくなる」と答えたのだ。

核弾頭の数についてなのか、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や、核関連施設、技術者の転職なども含めた計算なのか、「20%」という数字の真意ははっきりしない。しかし、「20%」という数字はきわめて低いハードルであり、非核化が始まった初期段階で制裁を解除する考えを示した、と受け取られている。

つまり、北朝鮮が求めている「段階的解決」を事実上受け入れたといえるだろう。

頼れば頼るほど、請求書(ツケ)が回されてくる

いずれにしろ、トランプ大統領の本音は、今回の米朝首脳会談で明白になった。

今後、韓国政府と日本政府には、トランプ大統領に頼れば頼るほど、請求書(ツケ)が回されてくるということだ。

こんな情勢の中、「米国とは完全一致」が口癖の安倍首相も、もはやトランプ大統領に依存することはできない。安倍首相は、拉致問題をめぐって金正恩委員長との首脳会談に自ら打って出るとは言っているものの、トランプ大統領の態度をみた金委員長は強気の姿勢で臨んでくることだろう。

五味 洋治 東京新聞 論説委員

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ごみ ようじ / Yoji Gomi

1958年、長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞東京本社入社。韓国・延世大学に語学留学の後、1999年から2002年までソウル支局に勤務。2003年から2006年まで中国総局勤務。この間、2004年に北京国際空港で金正男に偶然会ったことからメールのやり取りが始まり、のちに単独インタビューを実現させる。2008年8月から10カ月間ジョージタウン大学にフルブライト留学。現在は東京新聞論説委員。著書に『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋)、『父・金正日と私 金正男独占告白』(文春文庫)など。

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