歯磨き粉に含まれる「トリクロサン」の危険性 強すぎる殺菌力、がん細胞の成長促進も
どのマウスも、消化器官になんらかの問題が生じた。直腸が炎症し、そのため直腸出血、下痢、腹痛を引き起こしたほか、死期が早まるなどもあった。すでに結腸がんを患っているマウスの場合は、腫瘍の成長が速まった様子がみられたという。
原因は、トリクロサンの殺菌力がビフィズス菌など腸内の善玉菌まで殺してしまい、腸内フローラの多様性を破壊してしまうことにある、とポピュラーサイエンスは説明している。
前述のCBCは、トリクロサンの分子は非常に小さいため、石けんやシャンプー、シェービングクリームなど口に入らない製品を使用した場合でも皮膚を通じて体内に入る、と説明している。
抗生物質が効かなくなる懸念も
トリクロサンの人体への影響について、米テネシー大学の疫学者ポール・テリー氏(今回の研究には関与していない)は「まだあまりわかっていない」と話す。ただ、歯磨き粉に含まれている場合は歯肉炎を予防するが、他にも歯肉炎を予防できる方法はあるためトリクロサンを入れる必要はない、とポピュラーサイエンスに説明している。とは言うものの、マウスに対して行った実験の結果を受けて、トリクロサンが人間の腸もボロボロにするとすぐに結論づけるのは性急すぎるとの考えも示している。
一方で米マーケット大学のパトリック・マクナマラ氏(今回の研究には関与していない)はポピュラーサイエンスに対し、人体への直接的な影響のみならず、病原体が抗生物質に耐性を持ってしまう原因になりうるというトリクロサンの危険性を指摘。そのため恩恵より懸念の方が多く、トリクロサンが含まれる製品は個人的に使用を控えているし、自分の子供にも使わせない、と話している。
(文:松丸さとみ)
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