早慶卒「学部名」を言いたがる彼らの内輪事情 SFCや早稲田スポーツ科学部は別大学扱い

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また、社学も二文も、今風にいえば「学際的(研究対象が複数の学問領域にまたがっていること)」な学部だったため、学内で「何を勉強しているんだかわからない謎の学部」と冗談半分に怪しまれていた。

それが、2009年に社学は昼間学部になる。二文は2007年、一文(第一文学部)と共に、「文学部」と「文化構想学部(略称・文講)」に再編された。二文の人文系を広く学べるスタイルや知識・理論よりも表現に重きをおいた学び方は、文講に強く引き継がれた。早稲田の夜学消失を惜しむたくさんの声があったが、当の学部にとっては一気に何段抜きかの昇格だ。

昼間学部になったことに加え、この頃ちょうど、世の中に学際的な学びを是とする風潮が出てきたことも追い風だった。両学部の入試偏差値はぐんと上昇。いまや入試偏差値は、社学、文講ともに67.5である。これは法学部と同じ数値だ(河合塾2018年度入試予想ランキング表より)。

早稲田大学全体の学部ヒエラルキーは、「政経→法…………いちばん下が教育」が最近の定評である。人間科学部とスポーツ科学部は、所沢キャンパス開設当初から「別大学」扱いだ。

ここで挙がっていない学部の位置づけは、人によって意見が分かれる。だが、高い偏差値が出ているからだろう。少なくとも、ヒエラルキーを問うた時、「社学、文講はいちばん下」という声はまったく耳にしない。

学部ヒエラルキーはひとつのカルチャー

今の社学には「ロト6」という新しいニックネームがある。「数字選択式宝くじ」からつけられたこのあだ名には、「すべてマークシート式で、なかなか当たらなくて(合格しなくて)難しい」というプラスと、「明らかに実力不足なのに、当選(合格)してる人がいる」というマイナスのダブルミーニングがある。

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政経は昔からずっと、早稲田のエースとされているが、一時期、法学部に入試偏差値で追いつかれ、その座が揺らいでいた。また、学内のこんな声もある。

「所属学部を聞かれた際、『政経です』と答えると、一般入試組か、内部進学組・指定校推薦組か聞かれる。一般入試組と判明したときだけ、『おー、頭いい』と認められる」

かつてのような私大最難関学部としての絶対的存在ではなくなったのだ。

人はある程度以上の規模のコミュニティに属した場合、良くも悪くも、その内部でのポジショニングを気にする。早稲田と慶應というブランドの内部においても、属性別の優劣をつけたがる。いい歳の大人になってまで、何学部何学科が上だ下だと気にするのはみっともないが、キャンパスにおけるヒエラルキーはひとつのカルチャーだ。今後も少しずつ形を変えながら残っていくに違いない。

オバタ カズユキ ライター・編集者

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おばた かずゆき / Kazuyuki Obata

『大学図鑑!』監修者。1964年、東京都生まれ。大学卒業後、一瞬の出版社勤務を経て、フリーライターになる。社会時評、取材レポート、聞き書きなど幅広く活躍。

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