アマゾンをも阻むブラジル「貨物強盗」の猛威 2つの州だけで年間2万2000件の貨物強盗

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例えば、オンライン小売ビア・バレージョ<VVAR3.SA>は、トラック監視のために人工衛星を利用した追尾システムを開発。同社の物流部門を率いるマルチェロ・ロペス氏はロイターに対し、多くの貨物に武装警備員を随伴させていると語った。

「セキュリティについては費用を惜しまない」とロペス氏。「商品とスタッフを守るためにかなりの投資をしている」

同社は「クリック・アンド・コレクト」事業にも資金を投じている。オンラインで注文した商品を、顧客が系列の実店舗で受け取れるサービスだ。ロペス氏によれば、このプログラムは安心を重視する労働者階級の消費者に好評であり、危険な地域を行き交う配送トラックの本数も減らすことができるという。

アマゾンにとっても試金石

ブラジルの小売会社マガジンルイザもオンライン販売を成長させるために同様のモデルを採用している。だが、ルイザ・トレジャーノ会長の昨年の談話によれば、貨物強盗への懸念もあり、リオデジャネイロ州での事業拡大は避けているという。

1つの大陸並みに広大なブラジルでは、貧弱なインフラと高い税金、煩雑な官僚機構によって、かねてより貨物輸送コストは割高だった。貨物強盗の多発によって、その状況は悪化の一途をたどっている。

この厳しい環境は、アマゾン・ドット・コム<AMZN.O>にとっても試金石となる。この世界最大のオンライン小売会社はブラジルで電子書籍やデジタルムービーを中心とする販売事業を約6年続けた後に、大規模な事業拡大へと大きく舵を切った。

アマゾンは自社戦略を語ることを拒んでいるが、小売業界の重鎮らは、アマゾンも注意を怠らない方がいいと警告する。

ブラジルは「他国で成功した企業にとって、非常に異なる現実を突きつける」と、マガジンルイザのフレデリコ・トラジェーノ最高経営責任者(CEO)は、4月の公開イベントで語った。

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