しなの鉄道「車両戦略」のスゴい中身 中古は懐かしの塗装、新車は有料ライナーに
長野県内を走るしなの鉄道が大きな転換期を迎えている。
5月31日に発表した記者会見で、2019年度から8年間で26編成52両の新型車両を導入すると発表した。同社にとって、これまでにない大掛かりな取り組みだ。
しなの鉄道の経営は足元では黒字が続き、地方鉄道のなかでも「優等生」といえる存在だが、現在同社線で活躍する旧国鉄車両の「115系」は製造から約40年が過ぎており老朽化が目立つ。車両更新は待ったなしの状況にある。とはいえ、沿線人口の減少でこの先の旅客収入の伸びが期待できないなか、新車導入にかかわる投資はかなりの重荷になる。昨年、開業20周年の節目の年を迎え、新たな課題も見えてきた。
「このままの状態だと赤字」の危機
同社は1997年に県や沿線自治体の出資により設立された第三セクター鉄道だ。北陸新幹線高崎―長野間の開業に伴って切り離された並行在来線の運営を引き継ぐという形態としては全国初の事例である。利用者の伸び悩みから開業5年目で債務超過に陥ったが、県からの公的支援や運賃の値上げなどでしのぎ、息を吹き返した。固定資産に対する減損処理を行い、毎年の減価償却費が大幅に減った効果もあり、直近の2018年3月期まで13期連続で最終損益の黒字を確保している。
それでも同社の玉木淳社長は「このままの状態だと7年後ぐらいから赤字になる」と危機感を示す。これまで先送りしてきた車両更新に関連する費用や、社員の平均年齢(現在34~35歳)が上昇することによる人件費の増加などが経営を圧迫するためだ。そもそも沿線人口の減少や少子高齢化により、旅客収入の縮小も避けられない。
こうした将来の厳しい経営環境を見越して、同社は今のうちから収益基盤の強化に向けてあの手この手を繰り出している。車両を活用した集客、軽井沢の駅ナカ施設の開発、台湾からの観光客の取り込みと、この1年を振り返るだけでもさまざまな施策を展開してきた。
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