欧州政治不安で円高進行、再び「最強通貨」に ドル高以上に円高が進行している

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日本株にとって、円高は引き続きネガティブ要因だ。欧米中銀が金融引き締めを遅らせれば、株式市場にとってはプラスだが、政策ペースを変えるほどの経済や相場の悪化があるとすれば、投資家のリスク許容度が大きく低下するのは間違いない。

「その際、真っ先に売られるのが日本株であるのは、過去何度もみてきた」(外資系証券)と話す市場関係者は少なくない。海外発のリスクオフ要因でありながら、30日の日経平均<.N225>は一時400円を超える下落となり、2万2000円を約1カ月半ぶりに割り込んだ。

「日本経済全体でみれば、円高の影響はほぼニュートラルとみていいが、上場企業の収益に対しては依然として減益要因であり、日本株にとってマイナスであることは変わらない」とシティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏は話す。

足元の円高は、特に今回の「震源地」である欧州のユーロに対して大きく進んでおり、対ユーロ<EURJPY=>では、年初から7%半ばの上昇率に達している。東京株式市場では、ここ数日、マツダ<7261.T>やニコン<7731.T>など欧州関連株の下落が目立つ。

また、マネックス証券チーフ・アナリスト、大槻奈那氏は「日本の金融機関はスペインへのエクスポージャーを最近増やしている。欧州政治不安がイタリアからスペインに広がってくると、警戒感が強まりそうだ」と指摘する。

世界的に銀行株が軟調となっているが、30日の東京株式市場でも、銀行株<.IBNKS.T>は33業種の騰落率で下から6番目となった。

魅力増すJGB

ただ、円高は日本市場に逆風を吹かせるだけではない。海外投資家にとっては、日本市場の相対的な魅力を増す要因でもある。

「日本国債は表面上の金利はほとんどないが、海外投資家にとっては、円高局面では為替評価益が発生する。特に欧州勢にとっては、JGB(日本国債)は年初から7%も円高が進み、ベストパフォーマーの1つになっている」と、パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は指摘する。

30日の東京市場で、日本株は大幅安だったが国債先物は続伸し、長期金利も低下した。市場では「欧州債や新興国債から、日本国債に資金を逃避させる動きが、今後強まる可能性がある」(国内投信)と期待する声も出ている。

2017年までは、本来逆相関であるはずの日本株と国債先物が同方向に動くことが多かった。しかし、15年12月から始まった米利上げの効果が積み上がる中、株式も債券も何もかも上がるといった「ゴルディロックス(適温)相場」は変わりつつある。

日銀ががっちり金利を抑えこんでいるため、相場の変化は目立ちにくいが、リスクオフが加速するような場面では、海外勢のJGB買いが強まる可能性もありそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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