東電・東芝の「ALPS」は、役に立たない 東工大・冨安名誉教授に汚染水処理の対案を聞く
ALPSは無駄だけでなく危険、発想を切り替えよ
――冨安さんは、ALPSによる処理はコスト的に無駄であるだけでなく、危険だとも指摘しています。
東電はALPS処理済み水の海洋投棄を想定しているので、ストロンチウムと比べて相対的に微量で、危険性の少ない核種も高いコストと手間ひまをかけて基準値以下に減らそうとしている。そのためにALPSは設備が大がかりになった一方で、最も重要なストロンチウム除去のための工程が合理的に設計されていない。
東電の公表資料によれば、チタン酸塩を吸着材とする吸着塔の中で放射性ストロンチウムを吸着させることになっている。しかし、過度にストロンチウムを吸着した場合、放射熱と放射線化学反応(ベータ線が水に照射して水素を発生)による水素爆発のおそれがある。
偶然というべきか、前処理工程の「炭酸塩沈澱処理設備」でマグネシウムやカルシウムとともにストロンチウムの大部分が除去されるため、結果的に吸着塔の負荷が小さくなっている。しかし、こうした設備のあり方は本来あるべき姿とは違う。それに爆発のリスク自体もゼロではない。また、ALPSで除去した放射性ストロンチウムなどは、高性能容器(HIC)で厳重に保管するとしているが、ここでも発熱リスクや水素爆発のリスクが存在する。
――ALPSは故障続きで本稼働のメドがいまだに立っていません。その一方で増え続ける汚染水を減らすために、「高性能ALPS」を新たに導入する計画があります。
そうしたやり方は間違っていると思う。第一に考えるべきは、ALPS稼働を前提とした海洋投棄ではなく、できるだけリスクが少ない形で汚染水を溜め続ける方法に発想を切り替えることだ。
簡便さと安全性を考慮すると、私が以前、東電とともに共同開発した炭酸塩沈殿法に勝る方法はないと思う。詳しい方法は後で述べるが、この方法は私が東京工業大学の原子炉工学研究所在籍時に東電から研究費を得て開発したもので、使用済み核燃料の再処理をすべて水溶液内で沈澱分離する方法だ。1997年の米国の原子力学会誌に学術論文が掲載されている。
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