ソウルの小さな本屋で起きている大きな進化 韓国では若い店主たちが本の新しい形を提供
3歩歩けばカフェに当たるーー。ちょっと大げさかもしれないが、韓国・ソウルの街には本当にカフェが多い。そして、ここ2,3年の間には、カフェはカフェでもブックカフェや小さな本屋さんもよく見かけるようになった。
先日、ソウルでも人気の街、大学路を歩いていたら、急勾配の坂道の途中に洒落た看板がかかった小さな店が目に入った。大学路は小劇場や飲食店などが渾然一体となったパワフルな文化の街。公園に続くその坂には昔ながらの商店も軒を連ねていて、その合間にエッジのきいた店がちらりほらり散在していた。
店の名前は「シュレーディンガー」。
ガラス越しには大きな猫の置物が見える。うん? と思っていると、欧州から来たと思われる観光客が吸い込まれるように入って行く。つられるように中に入ってみると、店内は猫、猫、猫の猫だらけ。
「シュレーディンガー」は猫本を専門とするブックカフェだった。
アップデートできる書店が誕生
店主の金ミジョンさん(30代)がお店を始めたのは2年前。開業を決断してから開店まで1年ほどかかったという。
「本に携わる仕事がしたくて、本当は図書館を運営してみたかったんです。古文書関関連の会社を辞めた後、調べてみたら、図書館は維持するのが大変で現実的ではありませんでした。良いコンテンツが生き残る今の時代で、知識サービスができるものと考えてたどり着いたのが、アップデートできる書店、テーマのある書店でした」
自身が猫好きで、猫2匹と暮しているが、初めての猫を迎え入れたときは知識も何もなかった。実用書やインターネットから得た知識の中には誤ったものもあり、とてもかわいそうな思いをさせたこともあったという。
「そんな贖罪の意味もあって、猫に関する正しい知識が得られる、そんな本をそろえられたらという思いもありました。それに、韓国にはまだ猫を専門とした実と名を備えた本屋さんが存在しなかった。それなら私がやろう、猫本専門店としてのプラットホームになりたいと『シュレーディンガー』を始めたんです」
韓国では昨年くらいから猫人気が顕在化しているが、2年ほど前にはまだそんな雰囲気はなかったから、時代を読む目があったのだろう。
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