ソウルの小さな本屋で起きている大きな進化 韓国では若い店主たちが本の新しい形を提供
弘大は芸術と音楽の街で知られたが、ここ数年ジェントリフィケーション(都市再開発)が進み、流行を発信する一大産業地区へと変貌した。
同店が移転した場所は同じ弘大でも少し外れの静かな路地裏だ。移転後、来客にも変化がみられたそうで、「表通りにあったときは観光客の方もいましたが、移転してからは近くの会社で働く社会人ややはり近くに住む家族連れ、デザイン関係の方も増えたように感じています」
同店がそろえる本はおよそ3000冊。セレクトの対象となる本は、20,30代の「悩める世代」、特に女性が手に取るような本で、「人生を探す」内容のものが多いそうだ。今売れている本には、大手出版社の文学トンネが街の本屋さんとともに編集し出版した『若い作家賞受賞作品集 街の本屋ベストコレクション』がある。これは、文学トンネが選んだ次世代の作家の作品をさらに街の本屋に投票してもらって選んだ作品を集めたもの。
文学トンネも、複数の独立したブランドを持つユニークな出版社だ。たとえば、東洋経済の出版局が社内にルビー出版、サファイア出版という複数のブランド(インプリント)を持つような格好だ。街の本屋に限定した販売は初の試みとのこと。
「若い作家の作品を伝えたいと制作した本で、本を独自に選んでこだわっていて、本を見る眼目がある街の本屋だけで販売しようと企画されたもので、街の本屋を応援するというか、活性化させる意味合いもありました」(文学トンネ担当者)という。
悩むよりも自分の好きなことをやった結果
ソウルの街にある小さな本屋の店主たちは総じて若い。
「かつてのように努力すれば報われる、保障される時代ではなくなって、私たち(30代)の世代は就職、結婚などで悩める世代です。私たちの中で悩むよりも自分の好きなことをやろうという風に人生の重きをおく価値観が変わってきていて、そんな雰囲気も小さな本屋さんが増えている背景にあるかと思います」(サンクスブックスのソンマネジャー)
ソウル、ひいては韓国の変化は目まぐるしい。
今ある街の本屋もまたさらに新しい形態へと姿を変えていくのか、それとも当初のコンセプトを一途に守りながら老舗となっていくのか。
そうそう、シュレーディンガーの名前は、オーストリアの物理学者シュレーディンガーが提唱した思考的実験「シュレーディンガーの猫」からとったそうだ。
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