千葉で投げ売り?マンション販売に異変 活況に沸く不動産業界に大きな懸念

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千葉での供給の増加は首都圏のマンション用地減少の流れをくむものだ。首都圏の限られた用地に不動産会社が殺到し、入札価格は大きく吊り上がった。その結果、不動産会社は相対的に地価の安い千葉県内で1次取得者(初めて住宅を買う人)向けの物件供給を増やしていった。

ただ、総武線沿線での急激な供給増により、足元では早くも需給バランスが悪化。駅前など立地条件がよく、大手不動産会社が手掛けた大規模物件しか、客を集められない市場環境になっている。本来であれば、販売に苦戦している物件は大幅な値引きが避けられないはずだ。

にもかかわらず、今のところ物件価格が下がる気配はない。

アベノミクスの影響もあり、マンション用地は「入札価格が1年半前に比べて3~4割上昇した」(千葉県内で分譲中のマンション販売大手)。労務費や資材価格も上がっているほか、「東北復興や東京五輪で需要が見込めるようになり、ゼネコンが建築費の適正化に動いている」(トータルブレインの杉原禎之常務)。つまり、マンション建設コストが高くなっているのだ。

「この状況が続くと、160万円前後で推移してきた稲毛周辺の坪単価は、180万円まで上がりかねない。ただ、それだと検討中の客の予算額を上回ってしまう。先行きは厳しい」(前出の販売大手)。

こうした千葉県内の現状について、トータルブレインの杉原常務は「08年のミニバブル崩壊前夜と似た状況にある」と指摘する。

首都圏でドミノ倒しも

当時は海外などから投機資金が流入して、不動産価格が1992年のバブル崩壊直後に次ぐ高値水準まで上昇。1次取得者でも購入できる物件を求めて、不動産会社は今回と同様、郊外での供給を増やした。しかし、物件価格の上昇ピッチが客の所得増加のペースを上回り、売れ行きは日増しに悪化。売れ残りを嫌った不動産会社が値下げに走ったところ、物件価格の先安期待が高まり、客に様子見ムードが広がった。その結果、首都圏全体のマンション市況が総崩れとなった。

状況がまったく同じなわけではないが、需給バランスが崩れているにもかかわらず、コスト要因のみで物件価格が吊り上がる状況は共通している。ミニバブル崩壊の端緒となったのは東京都東村山市の物件だったが、今回は千葉県内の物件で同様の動きが起こる可能性はある。

東京都心での販売好調の一方で、千葉県内ではドミノ倒しの芽が膨らむ。需要の拡大は続くのか、それともミニバブルの二の舞いになってしまうのか。業界関係者は戦々恐々としている。

週刊東洋経済2013年10月26日号

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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