買収検討に値する会社はアリコジャパン以外にない−−ダニエルP.エイモス アフラック会長兼CEO
--アフラックにとって、今回の金融危機によるいちばんの影響は。
いちばん大きな問題は、日本の消費者がアフラックとAIGとを混同していることです。ただ、これもAIGが危機に直面するまで問題にはなりませんでした。ところが今は、弊社に1日1000本程度の問い合わせの電話がかかってきており、財政困難に陥っているのはおたくですかと聞かれるのです。
われわれは、ムーディーズからAa2という日本の保険会社の中では最高の格付けを、S&PからもAAという高格付けを受けています。しかし、AIGが危機に瀕してから、日本の消費者は格付け会社そのものに疑問を持ち始めています。そこで、まずわれわれはAIGとまったく関係がないことを説明し、そして格付けを使わずに、われわれの財務が強固だということを説明しなければならなくなっているのです。
契約者と代理店との間に確固たる信頼関係がある場合はそれほど問題ないのですが、そうでない場合、われわれが何者で、どうして安全なのかを説明するのに、非常に時間をとられるようになってしまいました。
--そもそもAIGとアフラックの大きな違いは。
AIGは非常に複雑な金融コングロマリットだということです。AIGは100を超える非保険会社を持ち、保険事業を行う保険会社も全世界に71社も保有しています。
一方、アフラックは、日本と米国に保険会社を持つだけです。われわれの売上高は、100%保険業務から得た収益であり、うち70%が日本からの収益なのです。
しかも、われわれはサブプライムにまったく投資をしていません。またクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も所有していない。サブプライムとCDSとの損失でAIGは巨額な損失を被ったわけですが、そのような投資戦略はわれわれにはまったく合わないのです。われわれは株式投資もしていませんし、投資目的の不動産さえ保有していません。われわれの投資資産のほとんどが投資適格の利付き確定債券です。われわれの投資残高は600億ドル(約6兆円)ありますが、そのうち100億ドルは日本国債です。
ただし、投資適格Aの格付けを持っている会社でも倒産することはあります。実際、2008年6月30日時点で、リーマン・ブラザーズの債券を日米合わせて2億5600万ドル(約260億円)、日本だけで2億ドル(約200億円)相当を保有していました。その一方で、投資資産は、07年12月31日から08年6月30日までの6カ月で約40億ドル増加しています。それに比べると2億ドルはわずかな額であり、(損をしているので)いい気持ちはしませんが、財務的に耐えられない金額ではないのです。
--AIGは投資のリスクを抱えすぎたように見えます。
AIGの投資戦略について詳しい内容はわかりません。しかし、外から見た場合、商品ミックスが変化したなとは思っていました。たとえば、変額年金などの投資性の高い商品が増えてきました。変額年金などを売るようになれば、投資からの利益が重要になります。投資性の高い保険商品を売るようになったせいで、保険リスクに加え、投資リスクも取らざるをえないようになったのではないでしょうか。
しかし、AIGが今のような財務状況に陥るとは夢にも思っていなかったし、私にとっても考えられないことです。アリコはよい競合相手であり、私の人生を通じてAIGを尊敬していました。あんなに大きな会社が、ほんの小さな投資部門のせいでこのようなことになったことはショックだし、本当に残念です。
(鈴木雅幸、筑紫祐二 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
Daniel P.Amos
1951年フロリダ州生まれ。ジョージア大学卒、保険経営学修士課程修了。73年アフラックのアラバマ州・西フロリダ州地区担当営業部長代理。83年アフラック社長。90年社長兼CEO就任。2007年1月より現職。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら