買収検討に値する会社はアリコジャパン以外にない−−ダニエルP.エイモス アフラック会長兼CEO
米リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとして、金融市場に世界規模での混乱が生じ、米保険最大手のAIGも巨額損失を計上した。その結果、AIGは米政府の実質的な管理下に置かれ、莫大な公的資金を返済するため、日本でもアリコジャパンなど、生保3社が売却される見通しとなった。
10月第2週には、米保険大手アフラック(アメリカンファミリー生命保険)がアリコジャパン買収を前向きに検討という報道も流れた。そこで来日中のアフラックのダニエル・エイモス会長兼CEOに、事の真相および今般の金融危機の影響について、緊急インタビューを行った。
--これまで内部成長だけで拡大してきたアフラックが、アリコジャパンを買収すると言われると違和感を覚えるのですが……。
まったくそのとおり、違います。
しかし、(生保が次々と倒産した)1990年代後半から現在まで、われわれのビジネスモデルにここまでフィットし、買収検討に値する会社がアリコジャパン以外にないことも確か。ですからアリコジャパンが売りに出されていると聞いて、買収を検討しないほうが愚かでしょう。
ただし、最終的に契約者と株主にとって、本当にメリットがあるとわからなければ、実際の買収には動きません。提供された買収に関する情報をじっくりと丹念に読んで、有用かどうか時間をかけて検討したいと思います。われわれは買収の専門家ではないので、慎重にならなければならないと考えています。
--アリコジャパン以外に、AIGスター生命とAIGエジソン生命も売りに出ていますね。
会社として検討する価値はあると思いますよ。ただ、アリコジャパンはガン保険や医療保険などの第3分野に特化しているので、どのような商品を扱い、どのような経営戦略を採っているかがある程度、理解できます。しかし、ほかの2社は第3分野以外の商品を売っているので、われわれにその商品に対する専門知識があるかと言われれば、残念ながらないことも確かです。
ただ、個人的にはあれを買おうと思って買い物に出て、別の物を買って帰ったことはあります(笑)。つまり、実際に現在の会社の状況、数字を見てみないとわかりません。
--社内に具体的な検討チームが立ち上がっているのですか。
売却が発表された直後に、確か投資銀行を通じて連絡があり、検討を始めました。今はCFO(最高財務責任者)が担当していて、彼に情報収集を依頼しています。
--アリコジャパンの資産でいちばん魅力を感じているところは。
そうですね。強固な販売チャネルを持っているところでしょうか。よい社員もいると思いますが、それ以外は情報を提供してもらって、精査してみないとわかりません。
--世界展開している米アリコ本社を買収する可能性もありますか。
われわれが検討するとしたら、アリコジャパンだけです。しかし、現時点では日本だけ買えるのか、本社も買わなければならないのか、そもそもそう言う選択肢があるのかどうかもわかりません。もしほかの国で展開するアリコに利益性があるようならば、もちろん検討はします。今回の話が持ち込まれたのはアリコジャパンからなのですが、買うとしたら日本単体ではなく、アジア全体を買わなければならないというオファーかもしれません。
そもそも自分が詳しく知らないことについては、コメントのしようがありませんよね。実際、われわれは売却資産というパッケージの中に、どのようなものが入っているのかすら知らないのです。アリコジャパンが、たとえばダイレクトやインターネットチャネルなど、われわれと違う販売チャネルを持っていることは知っています。だからといって今の段階で、細かいことまで言及するのは時期尚早だと思います。
たとえば、封筒を持ってきて、中身に興味がありますかと聞かれれば、中は見てみたい。だから興味はありますと答えます。しかし、この中に入っているものが欲しければおカネを払ってくださいと言われると、中を見るまで、おカネを払うかどうかの決断はできませんよね。今はまさに封筒の中身を見せてほしいと要求している状況。実際に中身を見てから、入札に参加するかどうかは決めます。
また、売却価格もいくらになるかわかりません。10月第2週にある程度の予想価格は出ましたが、その時点と現在とでは保険各社の時価総額も大きく変わっています。今の価格がいくらなのか見当もつきません。