日本株が5月末に上昇しやすくなる理由 「強気派」と「弱気派」、結局どっちが勝つ?
株価が買い値よりも高ければ投資家の気持ちは良いし、安ければ不愉快だ。つまり平均線と時価の関係が投資家の「センチメント」(心理)となり、そしてその移動平均の方向(上向きか下向きか)が市場の方向を表すことが多い。投資家が基準とする移動平均線には25日(短期)、75日(中期)、200日(長期)が多く、それに超短期の5日移動平均の絡む姿で判断するスタイルが一般的だ。
現在、日経平均の25日、200日移動平均線は上向きで、上値指向の市場環境になっている。だが75日だけがまだ下向きだ。これこそが「相場は強い感じがあるが、一気に行きそうで行かない」現状を表している。
この75日移動平均がこのまま行くと5月28日あたりからいよいよ上向く。実は筆者の強気観の一つが同29日から劇的に上向く75日移動平均線だった。なぜなら5月29日の75日前は2月7日、つまり2月6日のマイナス1071円が計算範囲から外れるからだ。単純な計算だが、マーケットのセンチメントが一瞬にして変わるのは、意外に単純な理由による。しかしその1071円安を含む75日間の平均でも上向きになるということは、筆者が考えている以上の相場の強さが現れて来たということだ。
適温相場が復活へ
「少なくとも6月12日まで株価の大下げはない」。これが兜町で囁かれる相場観だ。何のことはない、同日の米朝首脳会談に対する期待だが、市場は、非核化に応じれば北朝鮮の金正恩体制を保証する考えをはっきりさせた米国の本気度を評価している。「シンガポールには習近平中国主席も乗り込む」などという兜町雀の説もあり、「朝鮮戦争終戦宣言に向けて大きな進展がある」という見方は根強い。
一方、恐怖指数とも言われる米VIX指数が一時12.65まで低下(5月18日現在では13.42)して話題になっている。2月5日の大波乱の時は37.32まで急上昇したが、2月に入っても1日はまだ13.47だった。指数急変でこの変動率指数に投資するファンドが事実上の破たんをしたのは記憶に新しいところだが、恐怖指数はあの事件の前の状態にほぼ戻っている。では、前の状態は何だったかと言うと、「ゴルディロックス相場」または「適温相場」と言われる状態だった。つまり米国は再び「適温相場」に戻ったのだ。
もちろん景気はどこかで天井を打つ。1月の雇用統計を受けて米10年債利回りが2.8%台を超えたところでダウは値幅としては最大の下げを演じたわけだが、この時は2.8%台がその天井金利ではないかと思われたためだ。その後、その金利水準は「3%」に変わったが、若干の波乱でそれは織り込まれ、現在の3.1%水準になっても波乱はない。つまり3.1%は適温(経済が過熱せず冷めすぎない状態)金利だということだ。
では、景気や株価が天井を打つ金利はいくらなのか。これを当てた投資家がこの適温相場の勝者になる。このような相場の中で、日本における最大の弱材料は、2018年度の「企業収益見通し」だ。直近の日本経済新聞の集計では、売上高2.7%増、経常利益1.0%増に対して、純利益は2.0%減。結果、日経平均のEPS(1株利益)は5月9日の1722円から、16日には1641円まで急低下した。これでは上値は追えない。
だが次の四半期決算発表のある7月後半~8月前半には、円安を織り込んだ大幅上方修正が発表になるとの期待もある。それを評価しての「7月2万4000円説」も出ている。まずは、その前の6月前半にそれを占う野村、大和、SMBC、みずほ等大手証券の今期予想が出る。当面はこれら強弱材料が入り混じりながらの面白い相場展開が予想される。こうしたことも勘案しつつ、今週の日経平均予想レンジは2万2500円―2万3100円とする。
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