安倍首相と盟友・麻生氏の「死なばもろとも」 疑惑拡大も頬かむりに、党内から批判の声も

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これまでも、首相と麻生氏は政局の節目ごとに2人だけで会談して意思疎通を図ってきたが、国会正常化が決まった8日夜も都内の高級フレンチレストラン「シェ松尾」で、2時間余にわたり密談した。

この席で麻生氏は、9月の自民党総裁選挙での首相の3選を支持する考えを改めて伝え、「2人で協力して政権運営に当たる」ことを確認したとされる。この会談について自民党内では「首相と麻生氏は"一蓮托生"で首相の3選を実現し、その後の政権運営でも主導権を握り続ける腹を固めた」(自民長老)と受け取る向きが多い。

集中審議などを踏まえ、「反安倍」の野党5党は15日、柳瀬氏の証言内容を否定している中村愛媛県知事や、加計学園の加計孝太郎理事長の国会招致を求める方針で一致し、改めて自民党に申し入れた。ただ、自民党は「いつまでも加計や森友では国民の理解を得られない」(国対幹部)と野党側の要求には応じない構えだ。

その一方で、野党内にも「"もり・かけ"はもう食べ飽きた」との弱気の声も出始めている。「日本を取り巻く国際情勢が急速に変化し、経済も含め内外の重要課題が山積する中での疑惑追及一点張りは、国民の支持を得られない」(民進系無所属有力議員)との不安からだ。

とくに、「政権交代の中軸」を掲げて連休明けに旗揚げした国民民主党が、各種世論調査の政党支持率で1%前後のミニ政党レベルに低迷していることも、政権打倒を叫ぶ野党5党内にえん戦気分が広がる原因ともなっている。

世論調査では、柳瀬氏の参考人招致に関して「疑惑が深まった」との回答が7~8割と圧倒的多数だ。にもかかわらず内閣支持率は下落せず、横ばいか微増となっている。こうした状況は強気に徹する首相や麻生氏にとって「思うつぼの展開」(自民若手)ともみえる。

「タロ・カポネ」と安倍首相は「極悪タッグ」

今、永田町関係者の間では、国会売店などで「タロ・カポネ」と名付られた黒いカリン糖の菓子が大人気となっていることが、格好の話題だ。すっかりお馴染みになったソフト帽にサングラスとマフラー姿で葉巻をくわえるといった麻生氏のいで立ちをパロディ化した商品だ。宣伝用チラシには麻生氏の姿を描いた漫画の横に、「俺たちのタロー、ガンバレ!」の文字が躍る。

首相についても、地元・山口市の菓子メーカーが「晋ちゃんのまんじゅう」シリーズの製造・販売を続けている。関係者によると、最近のヒットは「晋撃の大臣まんじゅう」と名付けた商品だという。首相の名前の「晋」を、大人気漫画「進撃の巨人」に重ね合わせたもので、大臣を麻生氏とすれば、政治的には「何やら意味深」(自民若手)でもある。

永田町では、安倍政権は「ANA+S」といわれる。首相、二階俊博幹事長、麻生氏と菅義偉官房長官の頭文字を並べたものだ。ただ、ここにきて首相と麻生氏の盟友関係が前面に出たことで、二階、菅氏との「距離」も目立ち始めている。山口と北九州と地元が隣接し、祖父が首相という共通項も持つ首相と麻生氏だが、野党側は「"極悪タッグ"にしかみえない」(立憲民主幹部)と揶揄しており、自民党内の「反安倍・反麻生」の動きも含めて、会期末まで強気を貫けるかどうかはなお予断を許さない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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