安倍首相と盟友・麻生氏の「死なばもろとも」 疑惑拡大も頬かむりに、党内から批判の声も

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さらに、「セクハラ罪はない」という自らの発言についても、麻生氏は「誤解を与えたのであれば発言の仕方を考えないといけない」と反省する素振りをみせた。首相も「被害者の身に寄り添った対応あるいは発言が求められる」と述べるなど、セクハラ問題ではそろって殊勝な態度をアピールしてみせた。

これに先立ち、麻生氏は11日の国会審議で福田前次官のセクハラ問題について「財務省としてはセクハラを認めるが、私個人としては(福田氏が)『ない』と言っている以上、『ある』とは言えない」と答弁して激しい批判を浴びた。このため、15日の記者会見では「大臣としても個人としても(福田氏の)セクハラ行為を認定したと考えてもらってさしつかえない」と軌道修正し、いつもの仏頂面で謝罪した。問題発覚から1カ月以上たつ中、炎上し続ける世論の批判に配慮したとみられるが、「内閣支持率の低下につながっている」と麻生氏の言動を不安視してきた首相サイドも「ほっと胸をなでおろした」(官邸筋)とされる。

ただ、集中審議などでの首相や麻生氏の態度については、自民党内からも疑問や不安の声が相次いだ。「次期首相候補」をめぐる各種世論調査でトップ争いをしている小泉進次郎筆頭副幹事長は「(首相が)膿(うみ)を出し切ると言ったわけだから、その通りの行動をしなければいけない」と懸念を示し、「世界の構図が変わろうとしている局面で、いつまで経ってもこうした問題に時間をとられ、政治全体、行政全体の信頼が失墜していることは本当に不幸だ」などと述べた。

また、首相が柳瀬氏から「報告は受けていない」と答弁したことについては、伊藤達也元金融担当相が「(首相の)お友達の関係者が来たわけだから、そのことを報告してもおかしくない」とし、「(官邸での面談は)獣医学部新設の制度設計の実務的作業がスタートした時期に重なる。その時に3回、加計学園関係者と会っていたならば、概要を報告してしかるべきだ」と首相の答弁などへの違和感と疑念を強調した。

党内外からの疑問や反論を意に介さない首相

さらに首相が集中審議で「前川前次官(喜平前文科事務次官)も含め、私から獣医学部新設について、何らの指示も受けていない」などと答弁したが、前川氏は「私は学部新設が首相自身の強い意向だという認識を持っていた」と主張。併せて首相が「前川氏ですら、京産大(京都産業大)はまだ準備が十分ではないという認識の上に加計学園しかなかったということをおっしゃっていた」と答弁した点についても、前川氏は「京産大の提案内容を知らされていない私が、加計学園の提案と比較することは不可能。首相発言は事実に反し、極めて心外だ」と厳しく反論した。

ただ、こうした疑問や反論を首相はまったく意に介さない表情で、周辺も「疑惑追及に終始する国会より、国益に直結する首脳外交にまい進するべきだ」(外務省幹部)と首相の背中を押す。

総裁選への対応が注目される竹下総務会長も14日の講演で、財務省の文書改ざん問題での麻生氏の財務相辞任論について、「徹底的に(真相を)解明するのが一つの責任の取り方だ。部下が不祥事を起こしたら辞めてしまうということでは、なかなか将来に向かって、いい形にはならない」と述べ、首相が麻生氏の続投による疑惑解明と再発防止策を求めていることを評価、支持する立場を強調した。

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