安倍首相と盟友・麻生氏の「死なばもろとも」 疑惑拡大も頬かむりに、党内から批判の声も

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野党が「加計疑惑の原点」とする、2015年4月の柳瀬氏と加計学園関係者の面談に愛媛県職員らが同席していたかどうかについて、柳瀬氏は10日の参考人質疑で「いたかもしれない」などと曖昧な答弁を繰り返した。その一方で同氏は「(面談について)首相に報告したり、指示されたりしたことはない」と首相の関与は明確に否定した。

ただ、一方の当事者でもある中村時広愛媛県知事が11日、官邸に派遣した県職員が面談時に柳瀬氏から受け取った名刺も公開し、「うそは他人を巻き込む」などと柳瀬氏の態度を批判したため、改めて柳瀬氏答弁の信ぴょう性が問われる事態となった。

これを受けた14日の集中審議での野党側の追及に対し、首相は、「彼は名刺を渡していないなんてまったく言っていない」と柳瀬氏を擁護。県職員が作成した面談の報告文書についても「議事録はお互いに確認すれば『言った、言わない』(の議論)にはならない」などと県側の主張の正当性を疑問視する姿勢もちらつかせて追及をかわした。

また、10日の質疑で柳瀬氏が官邸での学園関係者との面談を認めたことについても、首相は大型連休中に今井尚哉首相秘書官(政務)を通じて知ったと説明した。柳瀬氏は昨年7月に今井氏に伝えたと答弁しており、野党側は「まったくひどい話だ。今井氏が首相に伝えないことはあり得ない」(社民党)といきり立ったが、これも「言った、言わない」の押し問答となり、首相答弁を覆す材料のない野党の追及は、尻切れトンボに終わった。

首相の対応にいら立つ野党側は、国民民主党の共同代表に就任したばかりの玉木雄一郎氏が「首相の答弁に辻褄を合わせるため、官僚が悪知恵を巡らせているのでは」と迫った。しかし首相は、「すべて私の指示で行っているかのごとく言われるのは承服しがたい。いつ、どこで指示したかを明確に示していただきたい」と色をなして反論するなど強気を貫いた。

セクハラ問題での麻生氏の謝罪に官邸も安堵

14日の午前と午後にわたった集中審議ではたびたび激しいヤジが飛び交った。野党側の首相への追及に大臣席から麻生氏が発した「不規則発言」のため、委員会室が騒然となる一幕もあった。玉木氏が、疑惑追及から離れて対北朝鮮外交での政府の姿勢を質した際、首相の隣に座る麻生氏が「自分がしゃべりたいんですよ、この人は」とヤジを飛ばしたためだ。

玉木氏の質問には首相もヤジを飛ばしたこともあって、激高した玉木氏が「残念です」と目を潤ませて抗議したが、首相も「私も残念だ」と応戦し、麻生氏もうす笑いを浮かべて無視するなど「異様な論戦」(共産党)となった。

その一方で、麻生氏は財務省の福田淳一前事務次官のセクハラ問題については、集中審議の中で、被害女性に「おわび申し上げる」と公の場で初めて謝罪した。立憲民主の質問者が「被害女性への謝罪はないのか」と迫ったのに対し、麻生氏は「(財務省として)文書でおわびを申し上げている」としたうえで、口頭で陳謝したものだ。

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