80年代の学生が顧みる東京と地方の大きな差 橘玲×湯山玲子「体験できることが違った」

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:コンサートとかはどこ行ってたんですか?

湯山:私の志向はライブハウスよりも武道館でしたね。ディープパープルは嫌いだったけど一応行って、KISSやクイーンなんかもね。80年代になると、ライブハウスをはじめ、インクスティック芝浦ファクトリーなどの小箱になっていくんだけど。今みたいに専門化してなくて、気の利いた子たちはみんな外タレロックに行くっていう感覚。

:当時の僕には東京までコンサートを聞きに行くっていう発想はなかったですね。別世界みたいでうらやましいです(笑)。あとフォークがありましたね。

湯山:私、フォークはダメだったなぁ(笑)。中学ではもう真っぷたつ。センスも良くって、仲良しだった女友達が、グレープっていうフォークデュオを支持したんで、距離をおいたぐらい。

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:あとはどんなの聞いてました?

湯山:中学生のときオンタイムで上映された『アメリカン・グラフィティ』からフィフティーズ周りのロックンロールも。これは多分にファッションの影響ですね。私は、1ジャンルにこだわり続けるというのではなく、あれもこれもといくつかのパイを全部取りにいくタイプでした。高校生になったら、ロックと同時にディスコですよね。その後、ブラックミュージックに開眼して、ファンカデリックやパーラメントとかのファンクにいくわけです。

橘 玲(たちばな あきら)/作家。1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラー、『言ってはいけない 残酷過ぎる真実』(新潮新書)が47万部を超え新書大賞2017に。ほかに『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』、『(日本人)』(ともに幻冬舎)『「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する』(筑摩書房)、『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)など著書多数(撮影:七咲友梨)

:ディスコもなかったなあ。映画で存在は知ってましたが、音楽で踊るなんて体験は東京に出てきて初めて。こんなカルチャーがあるのかって、あらゆることが衝撃でした。パスタだってフライパンで炒めたナポリタンしか知らなかったですから(笑)。当時はディスコってどこがあったんですか?

湯山:1977年に映画『サタデーナイトフィーバー』が大ヒットしたおかげで、新宿がディスコだらけになった。なのでそっち。六本木、赤坂方面は、80年代、大学生になってからです。

:新宿にはたくさんありましたね。

湯山:ありました。女の人はディスコに行くとフリーフードを食べられるんですよ。学校とクラブが終わるとボウリングに行くようにディスコに行って、ご飯食べて踊って帰ってくるっていう時代があったんですね。それが70年代から80年代の初めぐらいかな。でもそれも1984年の風営法改正ですぐダメになっちゃった。

大学生の頃は六本木がすごく注目された時期でした。田中康夫さんの『なんとなく、クリスタル』が出たのが1980年。「キサナドゥ」っていう大学生御用達ディスコができて、その初日に行っている。女子大生ブームの先駆けですよ。

:『なんとなく、クリスタル』は衝撃でした。ああいう世界は全然知らなかったですから。湯山さんは「わかる!」って感じだったんですか?

湯山:すごくわかるし、逆に既視感がありました。文壇の人は田中さんがオリジナルと思ったかもしれないですけど、ああいう筆致はすでにもう雑誌で知ってた。脚注がついて、そこにバーッとテキストがあるのは、『ホットドック・プレス』であったり『ポパイ』であったり、もっというと宝島やインディー雑誌がやってる印象がありました。モノがいっぱい出てきてモノにすべてのことを語らせる、雑誌の感覚を持ち込んでるんだって感じましたよね。

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