大混雑の「江ノ電」は社会実験で快適になるか 観光客が多すぎ、乗れない地元住民から不満
近年、国内数カ所で「観光公害」が問題となっている。交通渋滞の発生や違法駐車、ゴミの放置、騒音、住民のプライバシー侵害など、観光客が増えることで住民が被害を受けるのが観光公害である。京都をはじめ外国人旅行者が急増した地でこの言葉をよく聞く。
京都では、外国人旅行者の急増で市民が満員の路線バスに乗れず、とくに病院に行く高齢者が困っている例などが発生している。観光客の増加に対して、行政が革新的な施策を行う必要性が高まっている。
江ノ電社会実験の内容を整理しておこう。
・場所)江ノ電鎌倉駅
・乗車方法)鎌倉市が発行する「江ノ電沿線住民等証明書」を改札で提示すると、改札外の乗車待ち列に並ばすに改札を通れる。その後改札内の列の最後尾に並ぶことになる。改札内の列は長くないので、証明書を持つ者は、待っても次の電車には乗ることができる。
・対象者)由比ヶ浜駅の西側から長谷駅付近(実際は住所リストで指定)に在住の鎌倉市民、及び同エリアに在勤、在学する方
・上記証明書の発行)4月23日~29日、江ノ電鎌倉駅構内及び鎌倉市役所本庁舎2階
・注意事項)改札外に行列ができた場合に限り社会実験を実施する。
証明書の交付が受けられる対象エリアの鎌倉市民は約3万5000人。これに同エリアの在勤者、在学者が加わる。事前に証明書を申し込んだ人数が1471名で、対象エリア人口の約6%に相当する。昨年も同様の社会実験が企画されたが、天候のせいもあり改札外にまで行列ができなかったため、優先改札は行われなかった。
結果は?
さて、今年の結果である。5月3日、朝方まで雨の天気予報のせいか、人出が少なく、鎌倉駅改札外にまで行列ができることはなかった。改札付近には市の職員が数人立っていたが、社会実験を説明する必要がなく手持ちぶさたのようだった。
しかし翌4日、前日とは打って変わって午前中から鎌倉駅はJR、江ノ電とも大勢の観光客でごった返していた。駅前の様子は冒頭で述べたとおりである。社会実験は、構内への入場規制が敷かれた11時15分から開始、告知では16時までだったが、17時頃まで列ができたためその時間まで延長して行われた。4日の入場規制中に証明書で改札を通った人(実験該当者)は85名だった。少ないように感じるが、申込者の1471名が、実際に困っている人の数だろう。
「3日は入場規制が行われなかったし、4日は混雑を知って江ノ電利用を敬遠した地元の方が多かったようです」(市関係者)
3日、4日と何度も江ノ電に乗って様子を取材した。とくに4日は乗客の積み残しも多発するすし詰め状態での乗車が続き、へとへとになった。鎌倉駅では証明書を持つ市民から、「たくさんの人が並んでいる中で、自分だけ改札を通ると、何か白い目で見られそうで不安だったのですが、係の人が誘導してくれて全然目立たずに入れて良かった」との声が印象的だった。
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