大混雑の「江ノ電」は社会実験で快適になるか 観光客が多すぎ、乗れない地元住民から不満
江ノ電が社会実験を行う背景には、次の2点がある。
●多くの有名観光地の中でも鎌倉特有の事情
一方、沿線市民への解決策としては、次の2点が考えられる。
●ピーク時利用者の減少、ピークの平準化策
江ノ電独自の事情
まず、江ノ電独自の事情から見ていこう。混雑時の輸送力を増やすには、運行本数および連結車両数を増やす。これが抜本的解決策だ。
現在江ノ電は朝6時台から21時台まですべて12分おきの運行となっている。通常の首都圏の路線なら、平日は朝と夕のラッシュ時に本数が多く、日中は少なくなる。江ノ電にはこうした時間帯による本数の増減がない。
それでは、どうやって対応しているかというと、乗客の多い時間帯は4両編成、少ない時間帯は2両編成として運行しているのだ。
江ノ電は全線単線である。上下電車のすれ違いができる場所(交換駅)は途中の4つの駅と1カ所の信号場のみである。12分おきに走る電車は、このすれ違い場所すべてで対向電車をすれ違う。ということは、これ以上電車を増やそうとしても、すれ違い場所がないので増やせない。もし増やすなら、交換駅と交換駅との間(閉塞区間)6カ所に新しく交換駅を設ける必要があり、これは現状不可能に近い。
また連結数を増やした場合、現在5カ所ある交換駅・信号場とも、すれ違い部分の線路を長くしなければならない。これも相当難しい。
鎌倉特有の事情も大きい。鎌倉市への年間入込観光客数は2100万人を超える。京都市の約5500万人と比べれば半分以下だが、奈良市の約1400万人や日光市の1070万人よりはだいぶ多い。
ところが、面積あたりの1日の入込観光客数で見ると鎌倉が突出してくる。
鎌倉には、他と比べて狭いエリアにたくさんの観光客が押し寄せているわけである。また鎌倉市は人口約17万2000人なので、交流人口比(人口当たりの年間入込観光客数)は約120倍。京都市の約40倍、パリの約15倍、ベネチアの約80倍よりも上となる。鎌倉では昼間人口における観光客の割合が、世界的にみてもきわめて高いのだ。
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