あのロールス・ロイス初のSUV、驚愕の全貌 その名は「カリナン」、18年内に日本でも発売

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エアサスによって車高をコントロールできる。まずドアを開けると乗り込みを容易とすべく車体が40mm下がり、ドアを閉めると元の高さに戻る。また悪路走破に備えて意図的に40mm上げることもできる。都合80mmの上下幅があるわけだが、通常はクルマ任せにしておけば走行状況に応じて最適な車高が選択される。

ファントムと同じ6.75リッターV12エンジンをフロントに搭載。最高出力571ps、最大トルク850Nmのパワーは、ZF製8速ATを介して4輪に伝えられる。機械的なデフロックシステムは備わらず、電子制御されたフルタイム4WDシステムを採用する。前後トルク配分は不明。

昨今の乗用車市場において、SUVはどの国や地域でもドル箱のカテゴリーと言われる。かつてはキャデラック、リンカーン、ランドローバーなど、SUVをラインアップするプレミアムブランドは限られていたが、現在はメルセデス・ベンツ、BMW、アウディのジャーマン3に加え、ベントレー、ランボルギーニ、マセラティ、アルファロメオ、ジャガーなど、ほぼ全プレミアムブランドがこぞって参入する。アストンマーティンにもコンセプト段階のSUVが存在し、今回のロールス・ロイスの参入によって、いよいよ主要なプレーヤーでSUVをもたないのはフェラーリのみとなった。

ロールス・ロイスがSUVに参入する理由

なぜどこもかしこもSUVに参入するのか? 答えは簡単、売れるからだ。けれども、ロールス・ロイスの生産キャパシティは年間約4000台に過ぎず、現在すでにほぼフル稼働している。SUVだろうがなんだろうが、新たなモデルを追加しても販売台数を一気に増やすことはできない。カリナンを生産すればほかのモデルの生産が後回しになるというだけだ。にもかかわらず、流行にのったと見られるリスクを背負ってまで、SUVに参入するのはなぜか? 

それは最高の地位を保つためにほかならない。ロールス・ロイスはわれわれがこれ以上ないほどすばらしい物事に触れた際、半分冗談っぽく「~界のロールス・ロイスだ」という言い方を重要視している。

“最高”の例えとしてロールス・ロイスが使われる状態を将来にわたって保っていくことこそがブランドを守ることだと信じているのだ。そのために流行中のSUVにも最高のプロダクトを投じておくべきだという判断だったに違いない。これまで「砂漠のロールス・ロイス」や「SUVのロールス・ロイス」の異名は同じ英国のレンジローバーが欲しいままにしてきたが、砂漠のロールス・ロイスを本家がつくってしまったというわけだ。

筆者が撮影した「カリナン」の映像

カリナンの日本導入は2018年内。価格は未定。

ロールス・ロイス カリナン主要諸元<欧州仕様>
全長5341mm/全幅2164mm/全高1835mm/ホイールベース3295mm/車両重量2660kg/エンジン=V型12気筒6.75Lツインターボ(最高出力571ps/5000rpm、最大トルク850Nm/1600rpm)/トランスミッション=8速AT/最高速250km/h(リミッターあり)/欧州複合燃費=15L/100km(6.67km/L)/ラゲッジ容量600L(4人乗り仕様は526L)/価格=未定
塩見 智 ライター、エディター

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しおみ さとし / Satoshi Shiomi

1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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