米朝会談を裏から操っているのは文大統領だ あらゆるシナリオを描き、先手を打つ兵法

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当然、南北の外交日程のすべてを文大統領がコントロールすることはできない。そこで、文大統領は今、自らの手札を最大化すべく、南北の外交カレンダーの、その先へと目を向けているはずだ。

1つ目が、中国との協力関係構築である。トランプ大統領は折に触れては中国の習近平国家主席を賞賛している。米国のほかに頼る先が必要になった場合、韓国が頼ることが多いのが中国だ。中韓関係強化の動きが、近く表面化しても特段、驚くには当たらない。

文大統領の切り札とは?

次に注目すべきなのが、中国、日本、韓国による3カ国会談だ。北朝鮮に対して強硬路線を貫いている日本が曲者だが、中国との協力関係を打ち出すことができれば、文大統領にとっては、それだけでプラスである。

文大統領の切り札となるのが、「米国に対するバックアップ」と同氏が呼んでいるカードだ。文大統領は以前から、米国、韓国、北朝鮮による3カ国会談の可能性について反応をうかがっている。ただ、米国は韓国が目立つのを快く思っていないため、3カ国会談の開催はハードルが高い。事務レベルでの会合や、その他の対話メカニズムといった形をとることになるかもしれない。

このカードの目的は、米朝首脳会談に「安全弁」を設けることだ。追加の対話機会という安全弁があれば、米朝首脳会談が米国の期待に沿う結果とならなかった場合、会談を2段階に切り離すこともできる。つまり、第1段階では、トランプ大統領と金委員長が試みにあれこれ対話を行い、大まかな協力の精神を謳いあげることを主な目標とし、具体的な合意内容については、第2段階となる追加会談に持ち越すのだ。

単に問題を先送りしているだけではないか、との批判もあろう。だが、2段階協議には利点もある。より現実的な期待形成が可能となるので、1回の会談で何としても成果を出さなければならないとのプレッシャーは弱まる。つまり、トランプ大統領がひとまず「勝った」といえる状況をつくり出しやすくなるわけだ。加えて、トランプ大統領にとっては、外交を通じて成果を上げることが自らのプラスとなる流れに身を置くことになるため、好循環につながる可能性がある。

いずれにせよ、今後しばらくの間は、先日の南北首脳会談によって生まれた期待や雰囲気、外交日程、そして、これらに伴うリスクによって、北朝鮮外交の行方が左右されることだけは間違いない。

(文:Mintaro Oba)

筆者のミンタロウ・オバ氏は米国の元外交官。米国務省で韓国問題を担当した。現在はスピーチライターとして活動している。
「北朝鮮ニュース」 編集部

NK news(北朝鮮ニュース)」は、北朝鮮に焦点を当てた独立した民間ニュースサービス。このサービスは2010年4月に設立され、ワシントンDC、ソウル、ロンドンにスタッフがいる。日本での翻訳・配信は東洋経済オンラインが独占的に行っている(2018年4月〜)。

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