米朝会談を裏から操っているのは文大統領だ あらゆるシナリオを描き、先手を打つ兵法
一連の外交イベントの1つ目が、ハイレベルの軍事当局者会談で、5月中にまず将官級軍事会談を開くとしている。米朝首脳会談に影響を与えるチャンスを1つ増やした格好だ。
2つ目が、「(2000年に南北共同宣言が発表された)6月15日をはじめ、南と北にとって同じように意義のある日を契機に(中略)民族共同行事を積極的に推進」するとしていることだ。これによって、夏から秋にかけてさまざまな共同行事が開催される可能性が大きく開けてきた。
北朝鮮による「キャンセル」というリスクも
3つ目として、離散家族の再会が8月15日に予定されている。家族の再会は、深い共感を呼び起こす人道的イベントであり、感動的な映像がメディアを通じて全世界に流れるだろう。国際世論に影響を与えるという意味では、南北首脳会談以降に行われる共同イベントの中で最大のインパクトを持つことになるはずだ。
そして4つ目が、今秋に予定される文大統領の平壌訪問だ。訪問の時期に多少の幅を持たせているため、韓国と北朝鮮は今後、それぞれの国益にとって最善のタイミングを探ることになろう。
一連の外交イベントを日程にのせたことで、文大統領はある種の「セーフティネット」をつくり出すことに成功した。米朝首脳会談が行われた後も影響力を維持し、トランプ政権が危険な衝動に駆られて軍事作戦に訴えてこないようにするための安全装置だ。なんだかんだいっても、南北が対話を続けている最中に軍事攻撃を仕掛けるのは、とても正当化できるような行為ではない。
もちろん、リスクもある。金委員長がこうした外交日程をキャンセルしてくる展開は大いにありうる。米国が(金委員長の視点から見て)なした悪行を大げさに喧伝する目的で、日程のキャンセルが悪用される可能性があるのだ。米国の「敵対的な政策」のせいで歴史的な和平プロセスが崩壊した、との立場を打ち出してくるということだ。
キャンセルまでには至らなかったとしても、予定を取り消すぞ、と脅しをかけながら、韓国に譲歩を迫ってくる可能性もある。北朝鮮はこれまでに何度も、離散家族再会の機会などをとらえては、このような手を使ってきた。