米朝会談を裏から操っているのは文大統領だ あらゆるシナリオを描き、先手を打つ兵法

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文大統領がここまでに打ってきた最後の手が、軍事境界線上にある板門店での南北首脳会談だった。専門家の多くが指摘するように、米朝首脳会談の前哨戦となるものである。

だが、多くが見過ごしている点がある。韓国と北朝鮮が外交カレンダーをコントロールするのに成功したということだ。外交プロセスは現在、韓国と北朝鮮の手中にあり、文大統領と金委員長はともに有利な立場に立っている。今後、何カ月間にもわたって「2つのコリア」に対応を迫られるのは、米国をはじめとする大国のほうであって、その逆ではない。

「見栄え」こそが南北首脳会談で最大の内容

では、来る米朝首脳会談に向けて、先日の南北首脳会談が成し遂げた「お膳立て」とは何だったのか。今後の外交上の展開について、先日の共同宣言からどのようなことが推測できるのか。韓国と北朝鮮の外交的な影響力が強まるとは、どういうことなのか。そして、そこにある落とし穴とは、何なのか――。

まず、米朝首脳会談に向けた舞台設定から見ていこう。韓国と北朝鮮のトップが軍事境界線を挟んで握手する段階から、南北首脳会談における一連の動きは緻密に計算され、演出されていた。壮大な外交ショーにするためだ。

いろいろな点で、見栄えこそが南北首脳会談で最大の内容だったといえる。米朝首脳会談に向けて前向きな雰囲気を盛り上げ、物事が進展していくとの勢いを感じさせることが、南北双方にとって最大の目標になっていたからだ。こうした前向きな雰囲気によって、トランプ政権は米朝首脳会談が持つ可能性に、より大きな期待をかけるようになる――。文大統領は、このような希望を抱いているに違いない。

同時にこれは、米国に圧力を加えるものでもある。前向きな雰囲気をぶち壊せば興ざめとなるため、誠意を欠いたように見える行動は取りにくくなる、というわけだ。米朝首脳会談で何らかの勝利を手にしなければならないトランプ大統領にとっては、個人的なプレッシャーも強まる。トランプ大統領としては、自身の会談が南北首脳会談より、しょぼい結果に終わったと思われるようなことは、何としても避けたいところだ。

ポジティブな雰囲気は金委員長にとってもプラスだ。ただ、理由は多少異なる。南北首脳会談の成功はもちろん、北朝鮮国内における金正恩体制の正当性を高めるのに役立つ。だが、これは同時に米朝首脳会談に対する期待値を引き上げ、北朝鮮と何らかの取引に応じなければならないような状況にトランプ大統領を追い込む圧力としても作用する。前向きな雰囲気のおかげで、金委員長の交渉力が高まる、という流れだ。

さらに金委員長にとっては、和平プロセスに向けて誠意を持って行動しているのは自分だ、とのイメージを作り出すことも可能となる。これによって金委員長は、今後、緊張が高まった場合には、和平の妨げとなっているのは北朝鮮ではなく、米国なのだ、という構図を打ち出せるようになった。

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